(11)魔物よけを作るにはどうしたらいいですか
こちらは昨日掲載したものとなります。いやもう、すみません……
「私がついていますから!」
「いやいや、この前のことを思い出すと怖くて……」
といった押し問答の末、職員は渋々一人でコカトリスを確認に行った。念の為と魔物よけのお守りを持たされた。ザックは近くにあった木の根元に腰を下ろして待つことにした。
魔物よけからは魔除けの薬草の匂いがする。ゴブリン程度には効きそうだが、コカトリスではダメだろう。ザックは職員の行った方向をチラリと見た後、黒い箱を取り出した。
「おい、相棒。よく効く魔物よけの作り方は知っているか?」
『安全なセカンドライフを送るために、魔物よけは必要ですね。簡単で効果のある魔物よけの作り方です。
魔除けの薬草と強い魔物の一部、それを酒に漬け込み、数日置きましょう。できたものを布に染み込ませておけば出来上がりです。この前のコカトリスの一部があれば、それを使うと良い魔物よけができそうです。
ただ、新人冒険者に渡すのはやめておきましょう。彼らが調子に乗り、無謀な突撃をするかもしれません。』
倒れたふりをしていたので見てはいないが、おそらく新人冒険者たちはコカトリスをそのままにして山を降りた。それから時間が経っているから、コカトリスは残骸程度しか残っていないだろう。もったいないことをした。
しばらくすると、職員が歩いてくるのが見えた。
「いやあ、残念。これだけでした。」
職員は縄のようなものを振り回しながら戻ってきた。コカトリスの尻尾だ。
「コカトリスがいたという証拠になりますね。これであの新人冒険者たちの話も嘘ではないと言うことがわかりました。いや、ありがとうございました。では、戻りましょうか。」
ザックは職員が振り回しているコカトリスの尻尾をじっと見た。あの尻尾を少しでいいから分けて貰えば、魔物よけが作れるのではないだろうか。
「あ、すみません!怖かったですよね。」
ザックの視線を勘違いしたのか、職員は慌ててコカトリスの尻尾を隠そうとした。
「いえ、その。その尻尾を少し分けてもらうことはできますか?」
「何に使うんです?」
ザックは先ほどもらった魔物よけの袋を見せた。
「この薬草とコカトリスの尻尾を混ぜて、酒に漬け込むと効き目の強い魔物よけが作れます。これ以上魔物に遭わないためにも作りたいんです。」
職員は驚いた顔をした。
「よく魔物よけの作り方を知っていましたね。」
「私はエビソニアに住んでいたので……」
嘘は言っていない。職員はしばらく考えて頷いた。
「分かりました。尻尾の一部を差し上げます。その代わり、ザックさんの魔物よけの作り方をギルドで知らせても良いですか?」
「新人冒険者に持たせないでいただけるのなら。」
「確かに。あいつらに持たせたらまたコカトリスに突っ込んでいきそうですね。分かりました。ちゃんと教育した者に渡すことにします。」
職員がどうぞ、と尻尾を差し出してきたので、ありがたく付け根の部分をいただくことにした。村のあちこちに吊るしておけば、村に魔物がくる事はないだろう。これでこの冬は心地よく過ごせそうだ、とザックは思った。
数日後、ザックは村に来た行商人の男のところに行った。何度も来ているからすでに顔見知りだ。行商人はいつも荷車でやってくる。村人も何人か商品を見ている。いくつか瓶もあるが、どれが酒なのかザックには分からなかった。
「酒はあるか?」
「もちろんですよ。冬は欠かせませんからね。ガツンとくるやつがいいですか?それともゆっくり楽しむものがいいですか?」
行商人は愛想良く言うと、瓶のところに行った。
「コカトリスの尻尾と薬草を漬け込んで、魔物よけを作るから、味はなんでもいいんだ。」
ザックの言葉を聞いて行商人は飛び上がった。
「こ、コカトリスの尻尾があるんですか?」
「ああ。この前冒険者ギルドの職員に分けてもらったのが。」
行商人は真剣な顔でザックに尋ねた。
「ザックさん。酒にコカトリスの尻尾を漬け込むと、コカトリス酒ができるのをご存知で?」
「初めて聞いたよ。」
「コカトリス酒は、滋養強壮、疲労回復に効くと冒険者や力作業をする男たちから人気なんですよ。」
「へえ……」
「酒マニアの間では、レア物として垂涎の品なんです。なかなか作れるものではありませんからね。こんな小瓶でも高額になります。」
コカトリスを討伐することを考えたら、確かにそうそう作れるものではない。行商人は瓶を一つ抱えて、ザックに頭を下げた。
「お願いです。私の方で酒を提供させていただきますので、できたものを少し分けていただくわけには……」
冬の間使う分だ。多少分けても問題はないと思うが、魔除け草を入れたらコカトリス酒とは違うものになってしまうのだろうか。
「魔除け草も入れるがいいか?」
「もちろんですとも!なんならそちらも提供しますよ。」
行商人は満面の笑みを浮かべて頷いている。そんなに欲しいのか。
「作るのに気をつけることは何かあるか?」
「そうですね。できればコカトリスの尻尾はすり潰さずに、そのまま入れてください。」
「そのくらいだったらお安い御用だ。」
「では、一ヶ月後に取りに参ります。」
あまり行商人が嬉しそうだったので、ザックは渡す前に一口味見してみた。酒の味がとんがっていてそれほど美味くは感じない。それを話すと、行商人は呆れた顔をした。
「コカトリス酒は一年は熟成しないと出来上がりませんよ。あなたの飲んだものはただの魔物よけです。」
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