(12)ジャカバードが騒がしいです。どうしたらいいですか?
ギャア、ギャア、と今日も山でジャカバードがうるさく鳴いている。越冬のためにエビソニアから渡ってきたのだ。ザックはその声を聞きながら、自分の家の軒下に魔物よけの布を吊るした。
ジャガバードは魔鳥である。一羽一羽は弱いが、群れを作り、暖かいところを求めて放浪する習性がある。一匹一匹は弱いものの、木の実を食い荒らし、地面を糞だらけにするので、ゴブリンと同じくらい嫌われていた。村や町に現れると初級冒険者の練習台として即座に討伐される魔物だ。
魔物よけが効いているのか、ジャガバードはこの村にはやってこない。が、これでもかと鳴く声を防ぐ方法をザックは知らなかった。あの鳴き声には精神を乱れさせる何かが入っているに違いない。
「おい、相棒。ジャガバードがうるさくて敵わないんだが、どうしたらいい?」
今日もザックは相棒に語りかけた。黒い箱は青く光り始めた。
『山奥の村でのセカンドライフがジャガバードの襲来で脅かされているのですね。あの鳴き声には精神を脅かす呪詛が含まれており、非常に厄介です。
しかし、ここであなたがしてはいけないのは、うるささに耐えかねて山に入り、音速の拳でぶちぶちとジャガバードを叩き落としてしまうことです。再び冒険者ギルドの職員が来て、現場を確認しようとするでしょう。
正体を隠しつつ、静寂を取り戻すためのプランを提案します。
この前同様、冒険者を呼んで討伐してもらうことです。初級冒険者が適当でしょう。この前の新人冒険者でしたら、ザックさんに恩を感じて格安で来てくれるのではないでしょうか。
なお、ジャカバードの羽根は布団の素材として素晴らしいです。是非この機会に集めておきましょう。 』
黒い箱の提案を聞いて、ザックはがっくりと肩を落とした。
「またあいつらと付き合わなきゃならないのか……」
しかし、ジャカバードの羽根について良い助言も貰った。今年の冬は暖かい布団で眠れるかもしれない。
「よし!極上の眠りを手に入れるために頑張るか!」
彼らはすぐに村までやってきた。
「ザックさん!こんにちは。この前は迷惑をおかけしてしまい申し訳ありませんでした。今回はその挽回をさせてください!」
四人は丁寧に挨拶をすると、頭を下げた。しばらく見ない間に礼儀を叩き込まれてきたらしい。
「いやいや、コカトリスを倒した君たちなら、ジャガバードなど簡単だろう。よろしく頼むよ。」
ザックの言葉を聞いて四人の顔が明るくなる。怒られると思っていたのか。
「はい!それから冬の間はこの村にいて、山の警備をするようにも言われました。村長さんからの依頼だそうです。」
冬中こいつらが村にいるのか?頭痛を覚えながら、ザックは念のため確認する。
「この村には宿屋はないぞ?」
「大丈夫です!村長さんが宿屋を建ててくださるそうです。それまでは野営の練習をします!」
ニッと笑う笑顔が爽やかだ。
「まあ、頑張ってくれ。」
あとはこいつらに任せておこう。そう思って家に帰ろうとしたザックの腕を四人の冒険者達がガシッと握った。
「この前山歩きの仕方を教えてくれるって約束しましたよね?」
どうやら逃がしてはもらえないらしい。ザックは天を仰いだ。
四人はパーティを組んでいるわけではなく、新人冒険者の寄せ集めだった。全員短剣しか持っておらず、魔法が使えるわけでもない。
いつも一番前を歩きたがるのはエンリヒ。
その後ろを歩くのが少し大柄のビクトル。コカトリスを倒したと喋った張本人だ。
その後ろがシルク。キョロキョロと辺りを見回しながら歩いている。
最後は最年少のディー。まだ13歳だ。身体も小さく、遅れがちになっている。
「山では目印が必要だ。同じような木がたくさんあるからな。」
「なるほど。」
そう言いながら、シルクが木に赤い布切れを結び、そのまま上に視線を上げた。
上の方ではギャアギャアという声が絶え間なく聞こえてくる。ジャカバードは巣に近づかなければ人間を襲わないのだ。むしろあれは人間にこの森から出て行けと言っているのかもしれない。
「ところで、あんなに遠くにいるジャカバードをどうやって倒したらいいんですか?」
聞いてきたのはディーだ。
「どうしたらいいと思う?」
意地悪だと思ったが、ザックは質問に質問で返してみた。どう答えるか聞いてみたかったのだ。
四人は相談をはじめた。
「剣を投げても届かないよなあ。石か?」
「飛んでっちゃうよ。餌を撒いて捕まえるとか?」
「網でもあれば捕まえやすそうだけど」
「……僕たち、剣しか持ってないよ」
四人は途方にくれてしまった。エビソニアほど魔物対策が進んでいないのかもしれない。
「ジャカバードを見るのは初めてか?」
四人は顔を合わせて頷いた。
「魔物を見たのはこっちに来てからです。」
「南の方は魔物はダンジョンにしかいないから」
「ぼ、僕は鳴き声だけなら聞いたことあるけど、村には来なかったから……」
「冒険者ギルドでジャカバードについて調べてきたか?」
四人は俯いた。
ザックはため息をついた。彼らが全て悪いわけではないが、このまま魔物が増えてきたら対応できなくなる。冒険者たちに頑張ってもらわなくては、ザックの平穏な生活は守れないのだ。
「ジャカバードには弱点がある。ある匂いを嗅ぐと酔っ払うように落ちてくるんだ。」
読んでくださり、ありがとうございます。
「続きが気になる」「面白い」「早く読みたい」など思われましたら、下記にあるブックマーク登録・レビュー・評価(広告の下にある☆☆☆☆☆→★★★★★)、リアクションなどしていただけると嬉しいです。




