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(20)魔物がどのくらいやってくると予想しますか

 ザックは怒っていた。

 平穏な生活を送りたいのに、次から次へと魔物が騒ぎを起こしてくれる。とはいえ、見過ごす訳にもいかないのだ。


 外へ出ると、工場の建設現場に向かう。そこにアルマルドがいると踏んだのだ。


 現場にはシルクと職人達しかいなかった。図面らしきものを見ながら話をしている。


「シルク」


 ザックの声に、シルクは振り返って驚いた顔をした。


「あれ?どうしたんですか?ザックさん」

「アルマルドはどこだ」

「手紙を出したいとかで今村長さんの家に行きました」

「そうか。ありがとう」


 村長も一緒なら都合がいい。ザックは村長の家へ向かった。


「村長、いるか?」


 ドンドンと扉を叩くといぶかしげな村長が中から現れた。


「どうした、ザック」

「アルマルドがいるだろう。入るぞ」


 ザックは村長を押しのけて家の中に入った。アルマルドはこちらに背を向けて、何やら書き物をしているようだ。ザックはその背中をつまみ上げた。アルマルドは筆を持ったまま、手足をジタバタさせた。


「急に何をするんじゃ!手紙を書いておったのに!」

「おい。この近辺に魔物が増えるってのは本当か」


 ザックの質問に、アルマルドのジタバタが止まった。首を後ろに向けて、ザックの目を覗き込んでくる。


「……ほほう。この短い間にあれを読んでそこに気づくとはの。やはりお主、ただものではないな」


 正確に言えば読み取ったのはザックではないのだが、それを説明するのも面倒だ。

 ザックの言葉を聞いて、驚いているのは村長だ。


「魔物が増える?この村は大丈夫なのか?」


 アルマルドはため息をつくとザックを見た。


「まずは離してくれんかね。このままでは話もできん」



 三人は場所を変えて話をすることにした。暖炉の前の椅子に、アルマルドと村長が座った。反対側にザックが腰を下ろした。


「エビソニアでは高ランクの魔物が増えているそうじゃ。どうやら討伐に失敗しているらしくてな。情けない。」


 アルマルドはやれやれと首を振った。


「勇者がいないことが原因ということですか?」


 ザックは胸の奥の罪悪感を押し殺して質問した。結局誰も彼も自分に勇者をやれと、魔物と戦い続けろと言いたいのか。


「強い力に頼りすぎるから上手くいかなくなるんじゃ。いい時がいつまでも続くとは限らんだろうに。エビソニアは今が一番の混乱期じゃろうよ。」


 勇者が一人抜けただけで魔物に勝てなくなる状況が問題なのだ。アルマルドの説明に、どう反応していいのか分からなくなってザックは沈黙kした。


「それとこの辺の魔物とどう関係があるんです?」


 村長が首をひねる。


「強い魔物が増えて縄張りを主張しはじめると、弱い魔物は居場所を失って、移動せざるを得ないじゃろ?魔物たちは自分たちより弱い魔物がいる方向を選んで移動を始めるんじゃ。最近採取された魔物素材の場所が南へと移動していることが分かれば、答えは自ずと見えてくる。」


 同じようなことを相棒も説明していた。


『この村の周辺には敵となるような魔物が存在しません。なおかつ雪も少なく移動に適しています。そうなれば、魔物たちがこちらへと移動してくるのは仕方のないことです。』


「アルマルドさん、私たちは一体どうすれば……」


 村長がオロオロとする姿を見て、アルマルドは胸を張った。


「だからわしが直々にここに来たのじゃ。魔物と直に会える、滅多にない機会じゃからのう」

「本音は?」


 ザックは思わず聞いた。そんな殊勝な人ではないはずだ。


「魔物素材が取り放題、研究し放題じゃ!」

「そんな……」


 項垂れる村長を尻目に、アルマルドはカラカラと笑った。



「冗談はさておき、村の周りに小型の魔物を捕まえる罠を張り巡らせるのが良い。それを冒険者たちに巡回してもらえば、そうそう困ったことにはならんじゃろう。魔物の素材も手に入り、冒険者たちも仕事が増える。良い案じゃと思わんか?」


「この村は小さいんですよ。そんなに大勢の冒険者を置いてはおけません!」


 村長が悲鳴のような声を上げた。まだ宿屋もできていないのだ。積雪があるのに村の中で野営しろと言ったら、来る冒険者はいないだろう。いたとしても、仕事がなくて困っている低ランク冒険者くらいだ。


「アルマルド。この冬に来る魔物の数の予想を教えてほしい。」

「そうじゃのう。一角ウサギ、フェネック、ゴブリン、フレイムウルフあたりが来るとして、大体……500程度かの」


 少ないな、と思ったのはザックだ。


「そ、そんなに……?」


 村長はぶるぶると震え始めた。


『私の予測では3000程度です』


 相棒の予測とだいぶ数が違った。アルマルドが嘘を言っているのか、それとも村長を怖がらせないようにしたのか。


「大丈夫じゃ。どれも低ランクの冒険者でも狩れる。この村だけに魔物が押し寄せるわけではないしの。ところでザック。お主、魔物よけの作り方を知っているとか。」


 アルマルドが目をキラキラさせながら言った。


「わしにも魔物よけの作り方を教えてくれんかのう?二人で力を合わせたら、強力な魔物よけが作れるかもしれんぞ?」


「ザックさん、俺からも頼む。強力な魔物よけを作ってくれ!」


 村長に懇願されたら、断ることなどできない。


「高ランクの魔物素材が手に入るなら、作れなくはない。」


読んでくださり、ありがとうございます。

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