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(15)新人冒険者たちが山から戻ってこないんだが、どうしたらいいですか?

公募は無事出せました。ありがとうございました

 建物を建てる音が、村中に響き渡っている。

 あの後、シルクは大量の資材と職人を連れてこの村に戻ってきたのだ。


「この村に手袋工場を作ります。領主様の許可もいただきました。」

「もっと大きな町で作る方が売りやすいんじゃないのか?ここには冒険者ギルドもない。わざわざ運ぶのも大変じゃないか。」


 ザックの言葉にシルクは人差し指をチッチっと左右に振りながら、唇の端を吊り上げた。


「極秘で大量に作りたいんです。どうせしばらくしたら真似されますから。それに材料もこの辺の方が手に入りやすいです。」


 ジャカバードがどこまで南下するのかは知らないが、確かにこの辺で一旦羽を休める可能性は高い。


 そして今、ザックが気になっているのは、山に調査に行ったエンリヒたち三人の冒険者の方だった。


「ジャカバードの形跡と、ジャカ酔い草の採取をしてきます。」


 あの草の名前はそういう名前になったらしい。三人ともこの前は手袋が薄すぎて掴むことすらできなかったが、今回はシルクから支給されたのか、丈夫な手袋をはめていた。


「道案内も必要か?」


 胸騒ぎがしたのでザックはそう声をかけたが、エンリヒは首を横に振った。


「いえ!この前、山の歩き方は教えていただいたので、今回は自分たちだけで行ってみたいと思います。」


 そう言ったエンリヒたちの視線の先にあるのは工場建設の指揮をとるシルクだ。同じ新人だったのに、先を越された。そう思っているのがありありと見える。焦りは人の判断力を鈍らせる。ザックは経験からそれを嫌というほど知っていた。しかし、今のザックはただの村人だ。


「無茶はするなよ。」


 そう声をかけて送り出すのが精一杯だった。


 それから一日。エンリヒたちは戻ってきていない。野営をするつもりだったのならいいが、何かあったのかもしれない。山に行って彼らを探すべきか?そう考えていた時だった。


「よお、ザック。今日もいい天気だな。」


 機嫌よく声をかけてきたのは村長のコーエンだ。

 領主の声がかりで工場ができるし、人も増える。村にとってはいいことづくめだ。コーエンは建設中の工場を眺めながら、つぶやいた。


「せっかくだから宿屋も作るか。後は職人たちが住む家も必要だよな。」

「木材が足りなくなりそうですね。」


 工場用の資材は準備されていたが、それ以外は自分たちで準備をしなければならない。ちょうど良い、とザックは村長に提案することにした。


「ちょっと山に行って木を切ってきますよ。」


 コーエンは嬉しそうにザックを見た。


「そうか?それは助かるな。今はどれだけあっても足りん。ちゃんと村の金で買い取るからな。」

「それは助かります。」


 ザックはそういうと、一旦家に戻った。


「おい、相棒。昨日から新人冒険者たちが帰ってこないんだが。」

 黒い箱はいつものように青く輝いた。


『それは緊急事態です。何かあったと考えるべきでしょう。以前のようにコカトリスに遭遇したのかもしれませんし、ジャカバードの集団に追われているかもしれません。まずはあなたのスキルで新人冒険者たちの居場所を突き止めましょう。元勇者のあなたなら、新人冒険者の気配くらいは探知できますよね?』


 確かにザックはわずかな魔力の乱れから、冒険者たちを探し出す自信はあった。


「ああ、もちろんだ。」


『くれぐれも助けにきたと思われないように、たまたま山に木を切りに来たら、冒険者たちとでくわした、という体を装いましょう。念のため、治療薬も持っていきましょう。』


 行商人からポーションなら買い求めてあった。ザックはポーションと斧を持ち、山へと入っていった。


 村から少し離れた場所で、ザックは冒険者たちの魔力を探した。微弱な乱れがさらに山奥で三つ。生きてはいるようだ。ザックはほっと胸を撫で下ろした。


 山の中には木を切り出すための道が作ってある。その道の所々に赤い布が巻いてあった。ちゃんとザックの教えたことを守っているようだ。これなら山で迷うことはなさそうだ。そうなるとやはり緊急事態か。ザックはさらに気を引き締めながら山を登っていった。ザックは気づいていないが、普通の人の二倍ほどの速さである。


「ん?」


 ザックは足を止めた。誰か一人が山の上から下りてくる。姿を現したのは、ディーだ。泣いているのか目が赤い。ディーはザックの姿を認めると、速度を上げてザックのところまで走ってきた。


「ディー、どうした?エンリヒとビクトルがいないようだが。」


「ビ、ビクトルが崖から落ちて……。途中の枝に引っかかっているんだけど、助けられなくて!エンリヒが僕に『ザックさんを呼んで来い』って……」


「ロープは持って出なかったのか?」


 山歩きの必需品だと教えたはずだが。ザックが眉を寄せて確認すると、ディーは違うというように首を振った。


「ビクトルが捕まっている枝に、ジャカバードの巣があったみたいで、ジャカバードに囲まれてて!ロープがうまく下ろせないんです。」


「それは厄介だな。」


 ザックは唸った。冬の寒さを避けるため、南下してきたジャカバードが巣を作るのは、次世代のボスを作るときだ。ジャカバードたちはなんとしてもその卵を守ろうとするはずだ。


「行こう。急がないとビクトルが危ない。」



読んでくださり、ありがとうございます。

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