1章 羽拾い 9-違和感
少し心臓が早くなっているのを感じる。
昨晩のデイジーが起こした魔法と
先ほどのコーネによる魔法。
「この羽…」
違和感を抱きながらも、
魔法のわからない私には何をすることもできない。
たぶん、おそらく、良くなさそうだという直感に心がざわつく。
自分を落ち着かせるように、無意識に髪を触っていた。
ふと窓ガラスに映った頭がボサボサであることに気づき
慌てて髪を結い直す。
(早く仕事を終わらせてしまおう。)
この落ち着きのない心を鎮めたくて早足で次のお宅へと向かった。
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仕事を終えたのはまだ明るいうちであった。
コーネと同様に、どこの魔法貴族も羽を多く備えたいとのことで
多めに持ってきた羽は飛ぶように売れた。
手に入った金銭の重みは、いつもよりも明らかに重たい。
「いらっしゃいませ」
「預け入れをお願いします」
「かしこまりました。こちらに金額をご記入ください」
祭りと買い出し用に、いつもより少し多めに手持ちをとりわけ、残りは預ける。
「明日は買い出しをして、明後日はお祭りを見て、満足したら帰ろうかな」
計画をざっくりと考えながら、デイジーのいる宿へ向かった。
「戻りましたぁ」
居るのか居ないのか、はたまた寝ているのか起きているのか
さっぱり検討のつかないデイジーの様子に気を遣いながらゆっくりと宿の扉を開いた。
「おかえりなさい」
デイジーは意外にも、机に向かってメガネをかけ本を読んでいた。
「あの、連泊まで面倒を見ていただいてありがとうございます。昨晩はちゃんとお礼を言えていなかったので。」
「いいのよ。私もあなたに…この祭りに興味があるから、あなたに案内して貰えるなら願ったりよ。お仕事は済んだのかしら?」
「はい、無事終えましたので、明日からはこの街をご案内差し上げられます。」
「そう、よかった。では夕食でも食べに行きましょうか」
軽く荷物を整理した後、近場の食堂で特産品を交えた料理を注文し、
宿のお礼として料理の説明とこの街について案内をはじめた。
「おいしいわ。この街、海はないと聞いたけれど魚も美味しいのね。」
「はい。この街はあまり目立たない立地にありますが、海と内陸の大都市を結ぶ、
流通で栄えた大きな街の横にあります。
近場に大きな街があるので、あまり人気があるとは言えませんが
なんでも手に入れようと思えば手に入るうえに安く住めるので、長く住むには居心地のいい土地柄なんです。」
「なるほどねぇ、田舎とベッドタウンの間って感じかしら」
「そんな感じです。なので、海からは塩や魚。内陸からは資源や珍味。地元で農作物と、バランスよく暮らせているんです…いたのですが…」
「ん?違うの?」
ここでコーネから聞いた農作物の状況を伝えた。
「なるほど。それはこの街付近だけの出来事?」
「えっと、そこまでは知らないのですが…何故ですか?」
「もし、もしね、あなたの予想通り害獣の影響が植物のサイクルによるものなら、それって影響があるのはこの街だけではなさそうだと思わない?」
「ええ、まあ、そうかもしれないです。なので貴族様が資金集めを頑張ってくださると。」
「それがもし広域で起きたのであれば、この冬は大変よ。貴族はお金を稼げば他所から食べ物が手に入ると考えているでしょう?
良く考えて。他所にも食べ物がなければ、無いものは買えないわ。」
「あっ」
「もちろん冬に稼ぐのは大切だけれども、物資が枯渇する前に手元に抑えてしまわないと、買うに買えなくなるわよ。
そしてこれに気づいた者から順に静かな奪い合いが始まるわ。
問題が表面化した頃には、一般の民に手が届くものになっているかしら。
きっと価値が釣り上がっていき、枯渇を実感する頃には…」
「わ、私、お客様のところへ行ってきます!」




