1章 羽拾い 8-冬の備え
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つい先週のこと。
害獣が農村まで降りてきてしまい
収穫期の農作物を食い荒らした。
人々は対抗したが、急な害獣の群れを前に
追い払えた頃には収穫前の作物の半数近くが荒らされた後であった。
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「すぐに魔法部隊も投入され僕も赴いたが、着いた頃には既に…」
「そんな…」
「今の収穫は直接みんなの越冬のための蓄えだ。
収穫済みのと合わせて考えても足りるかどうか…
食糧はなんとか輸入や節制で耐えていくしかないが、輸入するにも元手が必要でね。
冬にできる仕事の効率化を図るために、僕ら魔法貴族が積極的に動くことになったんだ。」
「なるほど、それで羽が多く必要になったのですね」
「その通りだ。だから本当に助かったよ。祭りも準備どころではなくなった民も多くてね。せめて僕は祝福の祈祷を精一杯に努めたいと思う。君の持ってきてくれた羽はそれに相応しいよ。ありがとう。祭り、楽しんでいってね。」
「…はい」
素直に喜べない賛辞に心がざわつく。
農作物が豊富なこの時期は、害獣にとっても森の食べ物が豊富な時期だ。
天候に恵まれた今年、森の植物の育ちが悪いとは考えにくい。
しかし植物の中には表年と裏年があるものがあり、
実のならない裏年の植物が重なると、
天候や病とは関係なく森から食べ物が消える。
そうすると、獣は食べ物を求めて田畑を襲う。
こればかりは運なのだ。
少ししんみりとした空気のまま玄関まで見送りをしてくれたコーネは
いつも通り羽を掲げた。
私に対する祝福をかけようとしてくれている。
私は慌ててそれを遮った。
「あ、あの!これを使ってください!汚れが取れなくて商品にならないものです。
このご時世で商品を使っていただくのは忍びなく思います。
いくつか差し上げますので少しでもコーネ様の足しにしてください。」
そう言ってコーネに汚れた羽を差し出す。
「それはありがたいが…いいのかい?」
「はい。お力になれるのでしたら本望です」
「ありがとう。では遠慮なくいただくことにするよ。備えは多いに越したことはないからね。」
コーネはその中の1枚を掲げた。
「”羽よ、この者の守護幸福となれ”」
いつもの祝福を唱えた。
いつもの祝福にはならなかった。
羽は強い閃光を放ち
金の粉がはじけた。
辺りにはキラキラと粉が舞い
コーネは唖然とする。
「…」
「…」
目が合ったまま、二人の時が止まる。
空いた口をなんとか閉じたコーネが言葉を絞り出す。
「今のは…なんだ…?」
「わ、私は魔法はわからないです…コーネ様…?」
「そりゃ…そうか…僕は…いやすまない…わからないよな…しかし…何が…」
「…」
「ああすまない、もう行くよね。すまない…すまない。」
うわの空のコーネは、小さく呟くように、何に対するでもなく謝った。
私はおずおずとその場を歩き去った。




