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2章 魔法 11-ナイフ

挿絵(By みてみん)



「ごっはっんっ」

食事処で注文を終えたデイジーが元気だ。


「食事、好きですね。」

「もちろんよ!旅の目的の一つだもの〜」

「今までの旅で、お気に入りはありますか?」

「そうねえ…美味しいものは沢山あったけれど、やっぱり名物になっているモノは美味しいものが多いわねえ。毒草を食べる地域があって、あ、毒抜きはしてたんだけどね。不思議な食感と味付けで美味しかったわ〜」

「ど、毒草を!?」

「そうなの。人間って貪欲よねえ。」


デイジーからポンポン出てくる話は、私には想像しえないもので溢れていた。

旅をしていけば、私もそんな物に出会えるのだろうか。

私も、デイジーの様な人になれるだろうか。


満腹まで食べ、宿で荷物を整理し

次の街までしばらくお別れのふわふわベッドに倒れ込む。


そういえば今日は頭痛がしなかった。一時的な風邪だったようで、安心した。

明日もまだ、追手は来ないだろうか。

こうやって、デイジーと共に旅する明日でいられるだろうか。

モヤモヤとした思考をしながら、眠りへと落ちた。


-----------------------


「ここになります。」

朝、宿を出るとデイジーと共にマシューと書かれた鍛冶屋に着いた。


奥からミリアがひょこっと顔を出す。

「あっテイラさん!ちょっと待っててくださいね! おにーちゃーん!」


呼ばれたニケルが出てくる。

「おはようございますテイラさん。あ、お連れ様もおはようございます。もうご体調は良くなりましたか?」

「あー!酒屋の!へー!うんうんもう元気!親父さんは元気?」

「はい。なんとか。親父ー!これるかー?酒屋のお姉さんが来てるよ。」


奥からドタドタと足音が聞こえてきた。

ダン!と扉を開けてでてきた親父さんは、相変わらずの大男で

鍛冶屋というイメージを体現していた。


「おー!姉ちゃん!あの後大丈夫だったかー?しこたま飲んでいたもんなあ!」

「なあに親父さんもでしょー!」


二人でワイワイしているのを尻目にニケルはピアスを持ってきた。

受け取り眺めると、ゆがんでいた羽の彫金が綺麗に戻っている。

宝石の部分は戻らないが、思い出の品として充分だ。

「ありがとうございます。」


ピアスを差し替えようと耳に手を伸ばすが、まだ不慣れでまごついてしまう。

するとニケルが「手伝います」と申し出てくれた。


少しかがんだニケルの顔が近づき、そっと耳に触れる。

呼吸音が聞こえるほどの距離に息が詰まる。

じっと身体を固め、耳に集中をすると

ニケルの手が小さく震えている事に気づいた。

決して慣れた様子ではないニケルがピアスを交換し終えると、

ふう と二人で息を吐く。

緊張で少し頭痛がする。


「痛くはないですか?」

「はい。ありがとうございます。」


少し触れて、簡単には外れないことを確認し顔を上げると

ニケルはまっすぐとこちらの目を見てきた。


「テイラさん。この後ナイフの扱い方の説明を終えたら、少しだけお時間をいただけませんか?」


真剣な表情に少し戸惑う。

祭りが始まる前に出て行きたい。時間は無い。

(デイジーが帰ってくるまでなら問題無いだろうか…?)


デイジーへと視線を向けると

親父さんとデイジーがこちらを見てニヤついているのが見えた。


「っ! デイジーさん!」

面白がっているデイジーに声をかけると


「おおっと親父さん話が盛り上がってしょうがないですねえ!!少し場所を変えましょうか!」

「いやあ本当に盛り上がって仕方ねえや!良い店があるからこっちに来てくれ!」


「ちょっと!デイジーさんってば!」

「昼くらいに戻るわ〜!」


続けざまに後ろからも声が飛んで来る。


「お父ちゃんー!新しい髪飾り買ってくれるって約束今日だったよねー!さー!いこー!」


ミリアまでもが一緒になって行ってしまった。


「…」

「…」


急に静かになった空間に気まずさを覚える。

「とりあえず…ナイフの説明をしますね?」

「はっ はい。」



ニケルが鞘におさまったナイフを持って来ると、

それは前よりも一段輝いて見えた。

笑顔で

「綺麗ですよね。」

と言ってからナイフを抜いてみせる。


それから真剣な表情で説明をしてくれた。

「刃は一般的な材質なので、特別なメンテナンスは必要ありません。定期的に研げば特別問題は起きないと思います。塩分・水分による錆だけ気をつけてください。」

握られたナイフはキラリと空を反射し、鏡面の様な仕上がりだ。丁寧に研がれたのがよくわかる。


「問題は鞘の方です。こちらは材質が木です。金属ではないので、気温差や湿度差が高いと割れてしまうかもしれません。コーティングを塗り直したので少し耐久は上がっているはずですが、そういうモノだと思ってください。

でも悪いことばかりではありません。木の鞘は柔軟性があるとも言えます。刃を長持ちさせますし、長年使っているようなので、できたての伸縮をするような時期はとうに過ぎて安定しています。良い物ですよ。こちらはたまにコーティングを塗り直してあげてください。他には---」


ニケルは丁寧に一つ一つ説明をしてくれた。


そして最後に

「あの…これはお父様の形見でしたよね?お父様はどんなお仕事を?」

「父は羽売りでした。」

「羽……それは、肉を扱う仕事ですか?」

「…え?」

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