2章 魔法 10-旅支度
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「うぅ…テイラごめんってばぁ」
「怒ってませんよ」
「怒ってるよぅ…」
今日は朝から買い出しをしている。
長旅に必要なものを一通り買い揃えるので、荷物はデイジーに魔法で持ち運んでもらっている。
どうやら持ち運びの魔法は、魔力消費は少ないものの工程がめんどくさいらしい。
「追われているのに昨日丸一日休んだのですからお願いしますよ。師匠。」
「あぁん師匠て呼ばないでぇ…」
「はい次これお願いします。」
「うぅ…はい…」
そう言ってデイジーは魔方陣(?)の様なモノを、買った品に書き込む。
しばらく書き込んだ後にバッグに付けた宝石で撫でると、やがて品はバッグに吸い込まれていった。
「じゃあ次はこれです。」
「旅に必要かなあこれ…」
「スパイスは料理に必須ですよ。道中ずっと塩焼きと塩スープで良いですか?」
「ん…やる…。」
頭の中にメモしていたモノを一通り買い揃えると、広場で昼食がてら休憩をした。
長椅子に二人で腰掛け、デイジーがうんと伸びをする。
「くあ〜足がパンパン!手もパンパン!
も〜ペン持ちたくない!学生時代を思い出した!!!!」
「そういえばデイジーさんは、魔法学校に行っていたのですよね?」
「そうよぉ、魔法使いになるには必ず行く必要があるからね。
座学が多いのなんのって」
「座学が多いのですか?
なんとなく魔法でいろんなモノを浮かせたりしてそうなイメージでした。」
「あ〜…まあそれもあるけれどね。
ゆうても大学だから、ほかの大学と同じだけの学力も求められるのよ…
つまり普通の勉強と魔法の勉強で、勉強量が単純に倍なの。」
「それは大変ですね…」
「そ。だから労って?」
デイジーは上目遣いで私の膝にごろんと頭を預けた。
「もう…それだけ勉強したなら二日酔いにならないお酒の量も覚えておいてください。」
「気をつけます。」
膝上の頭をなんとなく撫でる。
赤くて艶のある髪。
珍しい髪色だと思う。遠い国では赤い髪の地域があると聞いたことがある。
デイジーは遠くから来たのだろうか。
魔法使いの旅はどのくらい移動が出来るのだろうか。
海は越えられるのだろうか。
故郷は?
家族は?
私はまだまだデイジーについて、知らないことばかりだ。
「くぁ…」
ぼんやりと思考するうちにあくびが出た。
早いもので、明日は門番が言っていた祭りの日だ。
明日の朝、早いうちにニケルのところへナイフとピアスを取りに行かなければ。
今はまだ、この街に噂は届いていなそうに感じるが、この安全はいつまで保つかわからない。
不安と疲労が混じりながらも、ぽかぽかと陽気が気持ちよくて、少しだけ眠たくなる。
少しだけ。少しだけ。
「テイラそろそろ起きてーーー」
「はっ あれっ 私寝ていました?」
「うん。そこそこ。」
「すみません!」
ばっと立ち上がり辺りを見ると、少し日が傾きだしていた。
「急いで買い物を終わらせないとっ」
「落ち着いて落ち着いて。
疲れてそうだったから、認識阻害をかけてね、その間に大体終わらせておいたわ。
いったん宿で確認しましょ。」
「ありがとうございます…」
手際の良さに少し唖然としながらも、宿へと戻った。
「はい。充分です。」
「よかった〜」
部屋のベッドに一通り満足のいく品量が並んでいる。
「その…怒ってしまってすみませんでした。」
「怒ってたのね。」
「怒ってました。」
「「ふふっ」」
二人で少し笑う。
「さて、じゃあ最後に。」
そう言ってデイジーはポーチを取り出した。
ベルトと青い宝石の留め具が付いている。
「実はこの前羽入れを落としちゃってね。新しいのを買うついでに、テイラの分もと思ったの。これは私からのプレゼント。」
「そ、そんな!悪いです!」
見るからに高いプレゼントに動揺する。
「遠慮する前に聞いてみなさいな。これはね、護身用に足につけるモノなの。
旅は何があるかわからないわ。
たった1つのリュックにすべてを入れてしまうと、
盗まれたり破損したり、それこそ拉致なんかに遭った際に詰んでしまうの。
だからこうやって、最低最小限のモノは肌につけておくのよ。」
「なるほど…知りませんでした…」
「付け方を教えてあげるわ。スカートの裾を持ってて。」
私は少し躊躇いながらも指示通り、スカートをたくし上げ素足を出した。
デイジーはベルトを解きながら近づき、足下で膝をつく。
右の足を少しだけ前に出す。
デイジーの指先が肌に触れた。遅れて、その後をなぞるようにひやりとしたベルトが太ももの上を滑っていく。
カチャリ、と銀の金具がベルトを固定した。
私は無意識に息を止め、強張った身体をどうしていいのかわからないまま、その手元を見つめていると、
「できたわよ。動いてみて。」
と顔をあげたデイジーと目が合った。
「あっ はい。」
何かを振り払うように身体を動かしてみる。
意外としっかりと固定されていて驚く。
「思ったよりフィット感があるのですね。」
「ずれたり痛かったりはない?しゃがんだりもしてみてね。」
一通りの動作をしてみて問題ない事を確認すると
さらに使い方を教えてくれた。
青い宝石は圧縮の魔法がかけられていて、デイジーのバッグと似たものらしい。
所有者の印を付けたモノであれば見た目よりも多くのモノを入れられる。
おすすめされたモノを試しに入れて見ながら手順を確認していると、
気づけばもう日が沈んでいた。




