↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
26/29

2章 魔法 9-平和な日



私は工房を後にした。


その背中を見ながらミリアは兄(ニケル)の脇腹を小さく殴る。

「…やめろ。」


----------------------


私は2人分の昼食を買い、デイジーの様子を見に宿へと戻ることにした。


「ただいまー…」

起こさないようそっと扉を開けると、

デイジーは眠ってこそいないが、青い顔で横になっていた。


「お昼ご飯を買ってきましたが、食べれそうですか?名物の岩石焼きだそうです。」

「ん…お腹空いてない…」

消え入りそうな声だ。


「ではこちらだけでも飲んでください。野菜など色々入ってるスープです」

「ありがとう…なんだか慣れているわね」

「父もお酒は好きでしたから。まあ、デイジーさんほど豪快ではなかったですけれどね。」


2人で静かに食べていると、デイジーがふと顔を上げる。

「あら?ピアス、新しいの買ったの?」

「あ、いえ、これは頂いたんです。壊れちゃっていたようで、直してもらっています。」


特に驚きもせず、「ふーん」と軽く流された後、

午後の予定を確認するが

デイジーはもう少し寝たいとの事。

代わりに私に羽を買ってきて欲しいらしく、

「羽売りなら目利きも出来るし任せちゃう」

との事で、財布を預けられてしまった。



「いらっしゃい!いらっしゃい!」

商店街へ着くと活気にあふれていた。


流れる人混みに沿うように、気ままに歩いてみる。

こうやって忙しい目的もなく、ぶらぶらと街を歩くのは、仕事と生きることに追われて居た自分には久しい感覚だった。

自然と、いつもとは違うところに目がいく。

笑い合う親子。仕込みに追われる厨房。看板を拭いている店員。

お釣りを財布に仕舞うなんでもない人の姿さえ、

いつもとは違って見えた。


「よし」

と意気込み、見つけた小さな羽売り屋の扉を開く。


カランカランとドアベルが鳴る。

少し薄暗い店内。木材で統一された古風な内装。

壁一面に設置された棚には等間隔に羽根が飾られ、微細な光の反射で高級感を演出していた。


「いらっしゃいませ。どんなのをお探しで?」

一番奥のカウンターに、白髪混じりの初老が座ってる。


しゃんと背筋を張り、自分を気高く見せて言う。

「中級程度の品を見せていただきたいです。日常使いです。」

「はい。中級ですね。こちらのあたりになります。」


カウンターの上に3枚の羽が置かれた。

手に取ると、防腐液の色合いとしなりがそれぞれ違う。この3枚は作者が違うのだろう。


「…こちらはいくらですか?」

一つを手に取り、値段を聞いた。


「それならひと袋金5だ。」

「わかりました。ありがとうございました。」

礼をしドアへ向かう。アレにその値段の価値はない。


「ま!まて!いや待ってください!間違えました金4です!」

「ありがとうございました。」

「金3で!これ以上は厳しいです!」

「…」


再度羽を見つめる。

「…ひと袋12枚で金3ですね?」

「え?10枚…」

「失礼します。」

「ひと袋12枚入りです!」

「買います。」


店主が商品を取り出し、渡した金を数える。


「まったく…君は誰なんだい?魔法使いではなさそうだと思ったのに。」

「それは運が悪かったですね。制作側の人間です。」

「はあ…なるほどね。勝てないわけだ。」

「ふふ。まあ貴族に憧れる民間人なら、金5枚取れたかもですね。」

「本当だよ。ああ見誤った。はいこれ。」

「ありがとうございました。」



商品を受け取り扉から出るとドスっと人にぶつかり尻餅をついた。

「わっ ごめんなさい!」

「ごめんなさい!」


同時に謝る。

「いてて…あれ?ミリアさん?」


ぶつかったのはニケルの妹のミリアだった。

「あっテイラさん!?すみません大丈夫でしたか?」

「ええ。飛び出してしまってごめんなさい。」


ミリアは重たそうな袋を持っている。

「お買い物ですか?」

「ええ。お父ちゃんが全然回復してくれなくて…仕方ないので効きそうなものを集めていました。」


幼い頃の自分と父を重ねて少し笑う。

「何を買ったかみてもいいかしら?」

「は、はい。」


中を見てみると、フルーツと野菜が入っていた。

「うん悪くないと思う。塩と水分も大事だから、野菜とお肉でスープにするといいと思うわ。」

「!! ありがとうございます!そうしてみます! うーーんしょっと」


ミリアは小さな体で袋を抱え直したが、重た過ぎるようでよろけている。


「よければ運ぶのを手伝わせてくれるかしら。実は果物のお店がわからなくて困っていたの。ついでに教えてくれると嬉しいのだけれど。」

「はい!それならわかります!」


少しだけ嘘をつき、果物を買う予定だったことにした。


ミリアは荷物を渡すと、嬉しそうに小走りで案内してくれた。

(妹がいたらこんな感じだったのかしら)

なんて想像してみる。


果物をいくつか見繕ってもらい、そのまま鍛冶屋まで送った。

「荷物を持っていただきありがとうございました!よければ食べて行かれますか?」

「ありがとう。でも待っている人がいるから帰らせてもらうわ。お話しできて楽しかった。またね。」


そう言って別れ、宿へと戻る。

お呼ばれは嬉しかったが、実は道中少し頭痛がすることに気づいたのだ。

とても楽しい時間だったが、疲れがでて風邪になりかけているのかもしれない。

今日は早く寝て回復に努めよう。


その夜はデイジーと簡単に食事を済ませ、ズキズキとする頭を感じながら早々にベッドに潜った。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。