2章 魔法 4-羽の価値
「お願いします。」
私は今更少しだけ恥ずかしく思い、そっとデイジーと手を繋ぐ。
デイジーが羽を構えて呪文を唱えると、二人の身体はふわりと浮き、あっという間に空へ舞った。
道中、眼下に流れる草原の波を見送りながら
耳に受ける風に負けないよう少し張った声で会話をする。
「そういえばデイジーさん、その羽は使いづらくありませんか?普通とは違いますよね?」
「そうね、かなり慎重に扱っているわ。だんだんとコツが掴めてきたけれども、知らない人がいきなり使えば暴発すると思う代物ね。」
「じゃあやっぱり売り物にはできなそうですね。少しでも旅の資金の足しにできたらと思いましたが…」
「うーんそうねえ。私の体感だとこの羽は売らないほうがいいわ。少し長い説明になってしまうけれど、移動中の暇つぶしと思って聞く?」
「是非聞かせてください。」
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羽はもともと高価であるうえに、羽を使った魔法の商売もかなりの高額取引だ。
この羽は魔法の増幅効果が異常に高く、発動の摩擦も極端に低いように感じられる。
それは値段でいうとかなり高額の代物だということになり、それに見合った仕事を受けれるとも言え、
知れ渡れば高位の貴族や窮地に立たされた者が必死で買いにくるかもしれない。
高位の貴族は、金を払えば手に入れられぬ物は無いと考えているから、売り切れでも起こそうものなら何をしてくるかわからない。
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「窮地に立たされた人間は…もうわかるわよね。」
「…はい。」
きゅっと唇を噛み締め、まだ痛む後頭部に触れてみる。
その様子を見たデイジーは顔を上げて続ける。
「それとね、扱いが難しいの。まるで腕を伸ばしたまま針に糸を通すかのようだわ。少しでもブレれば暴発してしまいそうになる。これを知らずに使ってミスが起きては危険よ。今は手持ちがないからこれに頼っているけれど、次の街で普通の羽を調達したほうがいいと思っているわ。残りは何か困った時のために取っておきなさい。」
「わかりました。では、次の休憩で羽の整理をさせてください。通常商品の在庫もまだあったはずなので、街に着く前に差し替えてしまいましょう。」
「そうね。そうしてくれるとありがたいわ。えっと、お代はどうしましょうか?」
「そんなの頂きませんよ!私のために使っていただいているのですから、むしろ私がお支払いしないとおかしい立場なのに!あれ、もしかして私、魔法使いさんにとんでもなくたくさん魔法を依頼しているような…」
「うふふ、確かに、そうかもね。」
「ひい」
顔をしかめて言うと、デイジーはいたずらに笑ってみせた。




