2章 魔法 3-違い
「ふわあ〜〜おはよぉ」
「おはようございますデイジーさん。朝食出来ていますよ。」
「えっ本当?ありがとう〜」
私は朝目覚めてからすぐに乾いた木を集め火を起こし、ソーセージと野草のスープにパン、そして串焼きにした燻製肉も用意しておいた。
「ん〜暖かいスープが染みるわぁ」
「パンと燻製肉もどうぞ」
「ん。ありがとう。あーん………んぐっ……うっ」
「ど、どうしました!?」
急に涙目になったデイジーが口から吐き出して言う
「ごめんなさい…えっと…慣れない味がして…どうやら私、この味苦手みたい。」
「すみません!こちらは私が食べますので大丈夫です!代わりに街で買ったハムがありますので、そちらを召し上がってください。」
「あ、ありがとう。ごめんなさいね。」
「いえ、文化が違えば味覚もきっと違うって事ですね。すみません癖のあるものを出してしまって」
「そう…ね…申し訳ないわ」
「気が付かず失礼しました。」
普段から家の近所に出た害獣を食べている自分と、おそらく貴族やそれに近い育ちのデイジーとは味覚の差もあるのだと思う。
(癖のあるものは人に勧める前に聞かなきゃだわ。特に外国の人ならびっくりさせてしまう。気の利かないことをしてしまったわ。)
結局デイジーにハムを渡して、私は燻製を2本平らげた。
深夜の夜食もしてしまったが故に、朝から腹が苦しい。
「ふぅ…」
「あらあー少食ねぇ」
これで少食なわけはないが、夜食を食べてた食いしん坊具合が気恥ずかしくて、頭をポリポリ掻きながら適当に笑って誤魔化した。
片付けをした後、私は改まってデイジーに向き直り深くお辞儀をしながら言った。
「デイジーさん、昨日は助けていただき、ありがとうございました。
この逃避も、デイジーさんがいてこそ叶いました。
その上に厚かましくお願いしてしまう事を許してください。」
少し息を飲みまた続ける。
「私は、羽を作る以外の事を知りません。私には、旅の仕方を教えていただける人が必要です。しばらくデイジーさんの旅に同行させていただけないでしょうか!!」
「…」
ぎゅっと目をつむり、神に願うかのように祈った。
他にこの先生きていく手段が浮かばなかったのだ。
しかしこれは、1人でなんでもこなせるデイジーにはただのお荷物が増えるだけでメリットの無い話。
私はデイジーに一方的に甘えることになる。
ジャリ ジャリ と砂を踏む音が近づき
目の前で止まった。
少し目を開くと、屈んだデイジーがそっと抱きしめてきた。
「私もね、考えなかったわけじゃ無いわ。でも、こんなの見捨てられないわよ。大人として、ちゃんとあなたがひとりで生きていけるようになるまで、面倒を見るつもりで助けたから、安心してちょうだい。これからよろしくね」
「ーっうぁぁあん」
溢れてきた涙に抗えず声が出た。
今までの不安と、早すぎる独り立ちで甘えることが許されなかった生活。必死で守ってきた家族との繋がりも捨ててしまって、潰れてしまいそうなほどに酷く心細くなっても尚、強く居なければと張っていた緊張の糸が切れた。
わんわんと泣き腫らし、目もしばしばとしてきた頃やっと落ち着く。
デイジーは飲み物を渡してくれながら言った。
「とは言え、私は魔法に頼った旅をしているから、魔法の使えない人の旅に詳しいわけではないのよね。一緒に居ながら方法を探っていきましょう。」
「はい!足手纏いにならないよう頑張ります!」
「ふふ、貴方はちょっと頑張りすぎなタイプよ。もう少しゆっくり大人になってもいいのよ。」
「それは…困ります。早くお役に立って拾って良かったと思っていただきたいです。」
「あら?それはもう思ってるわよ。」
「わっ!」
デイジーは急に抱きついてきた。
「こんなに可愛い子を愛でても許されるなんて〜拾って良かったわよ〜!」
頭をくしゃくしゃに撫でまわし、顔を両手でむぎゅっと挟んできた。
デイジーの顔が目の前にある。
「んむぐぐ」
「あらごめんなさい」
これは一苦労しそうだと顔を拭いつつも
こんなに甘やかされるのはいつぶりだろうと心が溶けていくのがわかった。




