2章 魔法 2-はじまり
ブルリと体が震えた。
「寒い?」
「…少し。」
夜の上空は、地上にいる時よりもグッと冷えた。
風を受け続け、さらに体温が下がる。
1日中歩いていた祭りの疲れと、このストレス状況で体が重たい。
眼下には漆黒の森が広がり、時折月明かりで木々の波が見える。
森の終わりが見えだした頃、少し開けた箇所を見つけた。
よく見ると、中央に建物らしきものもある。
「森小屋でしょうか」
「そうかも。少し近づいてみましょうか」
近づくと、よりシルエットがはっきりとしてきた。
それは木材でできた簡易の小屋で、灯りはなく、人の気配もなかった。
静かに降り立ち、デイジーはスタスタと扉の前まで歩くと、軽く扉をノックした。
しばらく経っても返事はなく、そっと扉に手をかけると
ギギィ と言うきしみ音を放ちながら、扉はゆっくりと開いた。
「ごめんください」
デイジーは少し大きめの声で室内に向けて呼びかけるも返事は無い。
「泊めていただける場所を探していまして。いらっしゃいませんか?」
全く物音せず。
デイジーは魔法で灯りを付け、室内を照らした。
中は、木こり道具のようなものでいっぱいだった。
斧や薪、ロープや釘など、雑多なものが棚に並べられている。
「どうやら物置のようね。テイラも入って。」
そっと踏み入れると、足元がギジリと軋んだ。
「朝までここで休ませてもらいましょう。」
狭いが寝れないこともなさそうな広さである。
デイジーは自分のカバンをガサゴソと漁り
「あったあった」
と小さな白い箱を取り出した。穴が空いている。
デイジーは羽を持ち、箱の穴に口を寄せ
羽越しに ふーー と息を吹きかけた。
羽は金の粉となり箱の中に吸い込まれると、
袋のようにブクブクと膨らみ出す。
それは小屋の地面いっぱいに広がって止まった。
「簡易ベッドよ」
「凄い…便利すぎる…」
「その分高いけどねぇ。毎回羽を使うし。」
羽は決して安いものではない。
素泊まりの宿があるならその方が安いかもしれない値段だ。
それを毎回使うとなると、確かにコストが嵩む。
「ありがとうございます。」
素直に好意を受け取りお礼を言った。
荷を下ろし、2人で横になると、すぐに眠気がやってくる。
(ああ、寝る前にきちんと助けてもらったお礼も言わないとだった)
眠気に抗いながらもう一度身体を起こすと、デイジーから寝息が聞こえてきた。
魔法は分からないが、2人分の長距離飛行が疲れないわけがない。
お礼は明日ちゃんと言おうと自分も横になり、目を閉じた。
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何時間寝ただろう。
ふと目を開けると、まだ辺りは真っ暗だった。
隣で眠るデイジーを起こさぬよう静かに体を起こすと、尿意を感じる。
だから起きたのかと納得し、外で済ませてから戻ると、少しだけ頭が冴えてしまう。
同時にお腹が空いていることにも気づく。
「そうだ、干し肉を少しだけつまんじゃおう」
鞄を開け肉を取り出し、ナイフで切り取り口へ入れた。
噛むと脂が滲んで旨みが広がる。
納得するまで食べ、少し食べ過ぎたかもと思いつつ、
怪我をしている間はよく食べた方がいい説を信じて飲み込み、また横になった。
スッと意識が遠のく。また眠れそうだ。




