↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
18/29

2章 魔法 1-逃避

挿絵(By みてみん)



二人で宿に荷物を取りに行くことに。

幸い、高く飛び上がると自分たちが夜空に溶け込んだのがわかった。

すぐに追っ手が来ることもないだろう。


昨晩まとめておいたリュックを掴みすぐにまた、ここを立つ。

私はカバンにある残りの羽を、数えもせずににぎり、塊で渡しお願いした。

「あの、デイジーさん。私の家に寄れますか?家にある残りの羽や、羽を作る最低限の道具を持っていきたいです。」

「わかったわ。飛ばすわよ」


デイジーは頷くと惜しむことなく羽を使い、

私が数時間かけて歩いてきた家路を高速で移動し、草原にポツンと立つ我が家へと到着した。


ガチャン!

時間がない。追っ手がいつ来るかわからない状況で、集中して急ぎ荷物をまとめる。

加工液の原液、羽の在庫、捨てる予定だった粗悪品も詰め込んだ。幸い羽は軽いので持ち運ぶのに苦労はしない。

ふと干していた肉が目に入る。

一応確認すると、表面はそれなりに乾き、燻製もしっかり艶がでていていい感じだ。

超長期食にするつもりがなかったので水分の抜けが足りないが、この土壇場での食糧の足しくらいにはなるだろうと、父のナイフで吊るし紐を切り、これも詰めた。

使ったナイフを腰に収める。このナイフも持っていこう。


ボロボロだった服も着替えるために脱ぐと、体の傷がよく見えた。

それをみたデイジーが言う。

「旅をする上で怪我は甘く見てはいけないわ。上から外を見張っておくから、体を清潔にしてきなさい」

「でも時間が」

「清潔さは危険と天秤にかけれるくらいに価値あるものなのよ」

「わかりました。急ぎます。」


こんな状況でシャワーを浴びていることにソワソワしながらも、自宅にいる安心感と、リラックスできるシャワーの時間でだんだんと肩の力が抜けた。

すると、よりあちこちが痛いことに気づく。

自分では見えない後頭部まで痛みがあり、思っていたよりも酷いあり様に、不安に狩られた人間の無慈悲さを実感する。

デイジーが民の反応を見て、早めに荷造りをしておけと言った意図を、今更理解した。


部屋に戻り、外着で尚且つ動きやすく、かさばりにくい服を着た。

急いで窓からデイジーを呼び戻すと、

「大丈夫、まだ気配はないわ。」

と言われ一安心する。

「あの、私にうまくできるかわかりませんが、私も屋根から見張るのでデイジーさんも浴びてきてください。この後どうなるかもわからないので…」

「…うん、ありがとう。そうしようかしらね。」

私の頭にポンと手を置いてからシャワールームへと消えた。


ハシゴで屋根に登り、座って街の方向を見る。

夜風が気持ちいい。

いつもはぼんやりとした小さい光だけ見える街は、今日は祭りの灯りで明るく輝き、遠目にも賑やかなことがよくわかった。


「いいわよ。降りてきて。」

と、デイジーの声がする。

思っていたよりも何倍も早くデイジーはシャワーを終えた。

速度に驚きながら戻ると、デイジーはもう荷物整理が終わりそうな様子。

慌てて私も、最後とばかりにリュックの限界まで服のストックを押し込んだ。もうパンパンだ。


私は室内を眺める。

棚、ベッド、壁、柱、天井…

小さな傷ひとつ取っても、それは大切な思い出だった。

最後に棚の上に飾っていた家族の写真を、額縁から外して大切にしまった。


「できました。」

あふれそうになる涙を、デイジーは見ないようにしてくれた。


ガチャリ。

もう開けることなど無いであろう扉に鍵をかけ、その鍵をポケットにしまおうとしてやめた。

鍵の付いていない小窓を開け、腕を伸ばし中の棚に鍵を置く。

旅には不要だ。


デイジーと目を合わせる。

デイジーは頷き、私を抱きしめた。

「プルガーレ」

デイジーと共に夜空に飛び上がる。


私は小さくなる我が家に手を小さく振ってみた。




「もし行く先に目星がなければ、南西にあるリプセンという街へ向かいたいです。あそこは古鳥の森の先にあるので追っ手が来づらいですし、森を避けるためには山を越える必要があって、噂の伝わりも遅いと思うんです。さらに先は海の方向でもあるので、その後も身動きが取りやすいかなと思いまして。」

「あら?いいじゃない。あなた旅に向いているかもね」


そう言うとデイジーは満点の星空を背に飛び始めた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。