1章 羽拾い 15-悪者
目の前に雷が落ちたような轟音と閃光が放たれた。
目が眩んで何が起きたのかがわからない。
「キャー!!」
悲鳴が聞こえる。
まだぼんやりとした視力でそこを見る。
だんだんとピントが合って来ると、腕を押さえた男が赤黒く横たわっているのが見えた。
他にも周りの何人かがテイラの周りをぐるりと避けるようにぐったりと倒れ込んでいる。
「こいつ俺らに攻撃したぞ!」
「酷い!飢えさせるだけじゃ足りないの!?」
「今のは魔法だよな?やっぱりお前、貴族に守って貰っているじゃないか」
フルフルと首を横に振るのが精一杯であった。
何が起きているのかなんて、私もわからないのに。
「チッ お前がやった癖に何で被害者みてぇなツラしてんだよ!お前が!やったんだろうが!」
怒号が飛んできた。
同時に鈍い音が身体に当たる。
ドン!と花火が上がった。
花火の光に照らされたそれは半分ほど齧られた林檎で、地面に転がった。
深く考える間も無く、次に砂が飛んできた。
「キャッ」
咄嗟に頭を庇い目を瞑る。次の瞬間、髪をグッと掴まれ引きずられはじめる。
「いや!やめて!やめてください!」
ヒュー ドン!
花火の音とざわつく群衆の声にかき消される。
足をばたつかせて抵抗するが、抑えつける男の人数が増えるばかりでズルズルと地面を引きずられる。
(怖い怖い怖い怖い怖い)
恐怖心で満たされた思考。
勝手に涙が溢れて来る。
一体私が何をしたと言うのか。
私の何が悪かったと言うのか。
花火の光で一瞬だけ照らされた身体は
無数の擦り傷と、破れた服がボロボロになっている様子だった。
何メートル引きずられたのかわからないが、ふと、視界に赤い髪が映る。甘い香りがする。
「助けて…お願い」
咄嗟に手を伸ばした。
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デイジーはテイラを探していた。
「きっとあの子も標的にされるわ」
追跡魔法で位置を把握するものの、群衆の密度が高すぎて身動きがとれない。
「きゃー!」
「わぁぁああ」
把握した位置ではない方角からも何人か助けを求める声が聞こえて来る。
会場では無数の混乱が起きていた。
日が沈んで視界も悪くなり、思うように動けない。デイジーは羽を取り出し、目立たぬよう拳の中に丸め入れ、小さく呪文を呟き体の強化を図る。次いでもう一つ拳に入れ、夜目が効くようにもした。
人混みをかき分けやすくなると、テイラを目指して歩き出す。
しかし間も無くして
「ママ?ママ?どこ?」
かき分けた先で幼い少女が母親を探していた。
一瞬見捨てる選択肢も浮かんだが、これを無視できる性格ではなかった。
すぐに少女を抱き上げ
「もう大丈夫よ。一緒にママを探してあげるわ。」
そう言って羽をまた拳に入れ、抱き上げた少女の髪飾りに所有者を指す魔法をかけた。
するすると金の粉が糸状に舞い、母親の方向を目指し伸びる。
「ありがとうございます!ありがとうございます!」
母親は比較的近くにいた。
安心してまたテイラの方向を目指す。
すると前方から一瞬閃光が走った。
デイジーの耳飾りが震え共鳴している。
「テイラ!」
人をかき分け速度を上げる。
人の密度がもどかしい。
ドン!と花火があがり、会場がパッと照らされたが、まだテイラの姿は見えない。
「あっ」
人の波に揉まれるうちに、強く当たった瞬間
羽を入れたポーチが外れ落ちた。バラバラと舞い落ち人に踏まれ穢れる。
この混乱の中拾い集めるのは危険だ。
すぐに諦めテイラの救出を優先し、また人混みを掻き分ける。
「テイラ!」




