1章 羽拾い 12-歪み
夜の街に出ると、前夜祭を行っているところがチラホラと見られて賑やかになっていた。
飾り付けも終わったようで、街が輝いている。
普段は行かないが、良く評判だと聞く酒屋へ案内した。
「いらっしゃいませー!」
元気な挨拶が飛んでくる。
ぱっと見で美人な店員さんが多い。これも高評価ポイントのひとつなのだろう。
「いらっしゃいませ!メニューをお持ち致しました!」
席につくなりすぐに店員が来る。
サッといくつか選び伝えると、元気なオーダーが通った。
「さて、そろそろあなたの話も聞かせてちょうだい!羽売りさんっ」
いたずらな笑顔を見せながらデイジーが乾杯を求めてきた。
カツンとグラスを当ててから
「私の話ですか…」
何を話せば、何から話せばいいのだろうか?と悩む。
とりあえずピンとこないままに生い立ちを話し始めた。
羽売りは家業であること。
今はもう家族が居ないこと。
品質管理の大変さ。
仕事には危険が伴う事。
まだあらゆる経験が充分ではなく、今回のようなアドバイスはとても良い勉強になったこと。
そうやっているうちに、横に中年の男性がやってきた。
料理を手にいっぱい持ち
「お待たせしやした!ごゆっくりどうぞ!」
と机に並べる。
「あの、もしかして昨日広場で貴族さんと交渉したっていう、すごい羽を扱ってると噂の羽売りさんですかい?」
「えっと、半分あってるような…」
「いやぁそうでしたか!是非お礼を言いたくてね!俺の妹が農家に嫁いでいて、今回の被害を受けたひとりなんだ。怪我も負ってしまっていて、動けない妹に俺が定期的に街から物資を送ると約束してたんだが、君が指摘をしてくれなかったらこの先どうなっていたことか!明日は凄い羽で祝福の祈祷をして解決してくれるのだろう?ありがとうな!」
「えっ!ちょっと、違いますそうではなくて、私はただの羽売りで」
「良い職人ってのは謙遜する物だよな!」
「そうじゃなくて!」
「おっと呼ばれたな。ではごゆっくり」
そう一方的に言って店の奥へ消えていった。
「どうしよう…なんか話が…」
「そうね、噂が曖昧に広がって、都合のいいように改変されている気がするわ」
「どうしたら止められるでしょうか」
「あの人とは知り合いなの?」
「いいえ、全く。初対面です」
「なら無理ね。あの人1人を理解させたところで、とっくに知らない人たちに伝わっていて手に負えないと思うわ」
「そんな…」
「明日の祈祷はお客さんがやるのよね?」
「ええ。1番出来の良かった羽をお渡ししたのは確かですが…」
「ならいいんじゃない?あとは貴族が民を安心させてくれれば一旦落ち着くでしょ」
「うぅ…なんか嘘ついてるみたいで…」
「嘘をついたのはあなたじゃなくて噂を誇張した人よ。素知らぬ顔をしてなさいな」
「ん…はい…」
しょんぼりとしながらも、事情のわかっている人が目の前にいることがせめてもの救いだと気を取り直して、グラスのジュースを一気飲みした。




