第9話 私も観て
12時30分。
ピーンポーン!
ーーと、
玄関のチャイムが鳴り、ドアスコープで覗くと、そこには青菜さんがいた。
青菜さんは俺の部屋の隣の隣、つまり黄城さんの隣の2号室に住む住人さん。
……でもなぜ?
先日の黄城さんといい、俺の部屋に訪問してくるの流行ってるのか?
それに、手には何か紙袋を持っている。中身は確認できないけど、そこまで大きなものではないだろう。
とりあえず、黄城さんの時と同様、チェーンロックを付けたまま、玄関を開ける。
以前同様部屋にはオタクグッズが大量にある。
黄城さんの一件から、オタクを隠し通さなくても良いかなとは思いつつも、一応念の為。
ごめん、青菜さん……。
「こんにちは、お昼時間にすみません」
食い気味で挨拶をする青菜さん。
「こんにちは。大丈夫だよ。それより何かあったの?」
「あ……あの、これ」
青菜さんは手に持っていた紙袋を差し出してきた。
俺はチェーンロックを外し、玄関を開け、紙部袋を貰う。
「これを俺にくれるの?中開けてもいい?」
「はい。青菜さんきっと好きだと思うので……」
「そ…そう。じゃあ、早速」
俺は紙袋を開け、中身を開封する。
ーー!!
中には、Vtuberグループ『クロマリンク』の青色担当、青凪レインの服が入っていた。
……え⁈
俺、クロマリンク好きなの言ったっけ?
黄城さんにか伝わっていないと思うけど…
「えっ?青菜さん、これって?」
「はい。『クロマリンク』の青凪レインの完全受注生産で出た服です」
それはそう!
俺だって、もう1着は持ってるし、『クロマリンク』5人の全員分持ってる。
「そ…そうだね。確かに。あ……でも、聞きたいのはそこではなくて、どうして青菜さんがこれを?それに、どうして俺に?」
「あ!…えっと、その……友達が『クロマリンク』のファンで、多く買ってしまったらしく、私に」
「で、先日…コンビニに来た赤石さんが同じグループの黄瀬さんのTシャツを着ていたのを見て、お好きかと思って…」
あぁ…!
そうだった。確かあの時、黄瀬さんの服のままコンビニに行ったんだった。
黄城さんに見られたかもしれないショックで、完全に意識外だった。
あの時、青菜さんもコンビニでバイトしてたんだった。しまった…
「ありがとう。青菜さん。確かにあの時、黄瀬さんの服着てたね」
「そうなんだ。実は俺、『クロマリンク』のファンで…このTシャツも嬉しいよ」
「それは良かったです。あと、ちなみになんですけど、私達にオタクなことって隠してます?」
「えぇ⁈そう思う?」
「はい。ガ…ガッツリ。部屋の中もオタクグッズでいっぱいですし」
青菜さんは俺の部屋を見ながら言う。
「黄瀬ミレアさんの抱き枕だってありますし……」
ーーしまった!
プレゼントを貰った時に部屋を見られてしまった!
それに、抽選販売で各キャラクター5人ずつしかゲットできなかった抱き枕を見られた!
俺はメンバー全員分応募して運良く、黄瀬さんのだけゲットできたけど…
今抱き枕を見られるのは恥ずかしい!!
俺は慌てて、玄関を閉めようとする!
それを慌てて止める青菜さん。
「でも、隠さなくていいです!」
「私はもちろん、このアパートに住む住人さん達はむしろ赤石さんが自分を出してくれた方が喜ぶと思います!」
「そ…そう。じゃあ…そうしようかな」
「は…はい!徐々にでいいので。それとあと1つだけお願いが…」
「うん?いいよ。なんでもやるよ。何か部屋に問題が?」
「いえ。部屋のことではないです。とても快適に過ごせてますし。実は…彼女のことです」
俺の持つ服のキャラクター、青凪レインを指差す。
「その、青凪さん?っていうキャラクターの配信、観てあげてほしいです。友達からその服を他の人にあげることを相談した時、『クロマリンク』のファンなら良いよと言われまして…」
……なんだ、そんなことか。
そんなの簡単だ!
もちろん観る!観たい!
「それはもちろん!観るよ!俺は『クロマリンク』のファンだからね。それに確か…彼女は今日配信するらしい。もちろん今夜の配信から楽しむよ!」
俺は自信満々に意気込む。
「そ…そうですか。や…約束ですよ!絶対に“魅せます”から!」
「で…では。これで失礼します!」
青菜さんは少し顔を赤ながら、急いで帰ってしまった。
……おぉ!
急に帰ってしまった。
もしお昼まだだったら、一緒にどうか…とも思ったけど。
まぁ…いいか。
今日のお昼はどうしようかな。
お読みいただき、誠にありがとうございます。
この作品の感想やブックマーク、評価をして下さるとありがたいです。筆者が泣いて喜びます




