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第7話 諦め

 ーードシャーン!

クローゼット内に詰まっていたグッズが溢れ出した。


その中には、完全受注生産の黄瀬ミレアのTシャツも収納されていた。



「実は俺、Vtuberグループの『クロマリンク』の大ファンで、そのグッズを集めているんです」


「黄城さんを含めた住人さんには、オタクって知られない方が管理人として接しやすいと思って、隠してて…」


 黄城さんは驚いたような顔で俺を見ていた。

 ん…?

 どうかしたのかな。

 やっぱり引いちゃったか……



 と思っていたが、黄城さんは予想とは全く違う反応を見せる。


「そうだったんですね!とっても素敵な趣味だと思います!」

 顔を赤らめながら興奮気味で話す黄城さん。


「特にその子!たしか先日夜にばったり玄関前で会った時に着てた服のキャラクターですよね」

 彼女は黄瀬ミレアのポスターを指しながら言う。



「あっ、そうです!覚えててくれたんですか?…というか、やっぱり見えてたんですね…」



「ふふ。見えてましたし、覚えてましたよ。でも、別に嫌だなんて思ってません!むしろ、1つのことに向かって全力で活動できることはとってもすごいことです!」

 全力で褒めてくれる。



 ……めっちゃ嬉しい。



 ※※



 それから、俺たちは一緒に肉じゃがを食べた。

 冷凍のご飯やインスタントの味噌汁が家にあったので、それも一緒に。


「今日はありがとうございました。赤石さんが一緒に食べてくれて助かりましたし、とっても楽しかったです!」


「こちらこそ、美味しいご飯ありがとうございました」


「喜んでもらえてよかったです。もし私でよければ、これかも機会あったら、また一緒に食べましょ。では、これで。おやすみなさい」


「おやすみなさい」



 ガチャン!


 玄関が閉まる。


 ……とっても幸せだった。

 肉じゃがも美味しかったし、何より一緒に話せて楽しかった。


 今までにない楽しい体験で、体の内側がとても温かい気持ちになる。


 ……アパートのみんなでご飯食べるのもきっと楽しいだろうな。

 バーベキューとかやれないかな。



 ーー!!

 俺はあることを思い出す。

 ……そういえば、肉じゃがって、今日の料理配信で黄瀬さんも作ってたな。


 鍋も確か似てた物を使っていたし、配信時間が終わった直後に黄城さんがやってきた。


 もしかして、黄城さんって……


いや待て。もしこれが本当に黄瀬さんだった場合ーー俺は今、とんでもないラインを踏み越えていることになる。

……よし、違うな。

 他人だ。


 肉じゃがはみんな作る定番料理だし、たまたまだよな。19時30分ってのも、ご飯の時間にはちょうど良い時間だし。



 それに…Vtuberの中の人を探る行為は絶対ダメだ。

 配信を観ていくうちに、気になることもあるだろう。でも、もし俺たちの行いのせいで正体がバレてしまって、配信活動ができなくなったら、リスナーも配信者も悲しい。

 リスナーとして、きっちり立場をわきまえよう。


 俺は改めてリスナーとして、そして『クロマリンク』のファンとして、決意を改める。

お読みいただき、誠にありがとうございます。

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