第6話 黄色の訪問
19時30分過ぎ。
隣に住む黄城さんがうちにやってきた。
ーーというか正確には、玄関前に来ていた。
手には大きな鍋。
少し重そうな表情をしている。
俺はチェーンロックをしたまま、玄関を開ける。
「こんばんは黄城さん。どうされました?そんな大きな鍋を持って……」
「赤石さん、急にすみません。実は…肉じゃがを夕飯用に作ったのですが、多く作りすぎてしまって…」
「もしご飯まだでしたら、一緒に食べませんか?」
ーー驚きの提案だった。
いや、正確は驚いてはいない。
鍋を持ってきてたことから可能性としては考えてはいた。
だが、謎も残る。
それはーー
なぜ俺を誘ったのかだ。
このアパートには黄城さん含め、5人の住人が居て、かつ全員女性だ。
歳もそこまで離れていないだろうし、わざわざ男の俺を誘う理由はない。
断じてない!
それなのに、なぜ?
……まぁ、理由は分からないが女性の作った料理を食べられるチャンスなんて、母親以来だった俺。
悪い気はしないので、…というかむしろ嬉しかったので、その誘いを受けることにする。
チェーンロックを外し、ドアを完全に開ける。
ーー⁈
俺はここで、ある重大な事実に気づく。
『家の中のオタクグッズそのままだ!』
部屋にかかっているタペストリーやポスター、抱き枕にアクスタまで、今の俺の部屋には『クロマリンク』のグッズでいっぱいだった。
俺は慌てて、今にも中に入ろうとしている黄瀬さんを止める。
「えっ!どうしたんですか?一緒に食べてくれるんじゃ……」
「い…いや、じ…実はですね、家の中が散らかっているのを思い出しまして…少し外で待ってていただけますか?」
「あっ…いや、でも大丈夫ですよ。1人暮らしですもんね。散らかっているのはお互い様ですし、私は本当に気にしないので、そのままで…」
我関せずとグイグイ中に黄城さん。
俺は慌てて止める。
「お…俺が耐えられないんです。1分で片付けますんで、ちょっと待っててください!」
ドン!
大きな音を立てながら玄関を閉めて、急いで、掃除に取り掛かる。
ベットの上の抱き枕やデスクの上のアクスタ、壁に貼ってあるポスターやタペストリーも取り除き、ひとまずクローゼットの中に押し込んだ!
幸い、服はそこまで多くは持っていなかったので、全部収納することができたが、何かの振動で開いてしまったら、全部溢れ出すだろう。
俺は不安な気持ちを少々抱えながらも、玄関で待っている黄城さんを迎え入れた。
初めて自分の部屋に女性が入った。
ちょっと緊張する。
「とっても綺麗じゃないですか!本当に部屋散らかってたんですか?」
黄城さんが少しニヤついた顔をしながら聞いてくる。
「い…いや…」
反応に困り、変な返答をしてしまう俺。
「分かってますよ。赤石さんも男の人ですし、エッチな本でも隠したんですよね。例えば、ほらあのクローゼットとかに!」
さっき俺がグッズを隠したクローゼットを指しながら黄城さんが言う。
ーーえ……?
そんなに早く隠し場所ってバレるものなの…?
「いや…いや、そ…そんなわけないじゃないですか!それにクローゼットなんて、そんなありきたりな場所に隠すなんて…ねぇ……」
動揺が隠しきれない俺。
「てことは、何かを隠したってのは本当なんですね?」
ーーしまった。
やってしまった。
彼女は俺の部屋が散らかっていたことは知っていたけど、物を隠したことは知らなかった。
あえてクローゼットを指して、俺を試したんだ。
ーーやられた。
鎌をかけられてしまった。
「ふふ…赤石さんって面白いですね。とっても素直で」
「黄城さんが強すぎるんですよ」
「へへ…」
彼女は少し照れくさそうに笑いながら、頭をかいた。
「ちなみに、何隠してたんですか?本当にエッチな物ですか?」
「いや、そういうものではないのですが…」
俺は諦めて、クローゼットを開ける。
ーードシャーン!
パンパンにクローゼット内に詰めていた『クロマリンク』のグッズが溢れ出した。
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