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第28話 赤色の訪問

 コンコン。


 ノックの音がやけに大きく響く。


「……はい」

 少し弱い声。


 扉が開く。


 見たことないくらい、元気のない黄城さんだった。


「大丈夫ですか?」


「……あ、健介さん」

 無理に笑う。


 それが余計に痛い。


「少し、いいですか」


 頷く。


 部屋に入る。

 しばらくの沈黙。


 部屋には虹川ソラのぬいぐるみがあった。

 ネットに広まっているものと同じ。


 やっぱり彼女が……虹川ソラ。

 そして、黄瀬ミレア。


 何を言えばいいか分からない。


「……あの」

 ポケットからハンカチを取り出す。


「これ、落ちてました」



 彼女の視線が止まる。

「……どこで」


「アパートの前で」



 沈黙。

 空気が変わる。


「……これ」

 小さく呟く。


「大事なものですよね」


「……はい」


 少し間を置いて。

「リスナーさんから、もらったんです」


「……怖いんです」

 ぽつりと、彼女が言う。


「また、同じことになるのが」

 手が震えている。


「でも……やめたくなくて」

 顔を上げる。


「配信、好きなんです」



 その言葉。

 あの時、聞けなかった本音。


 俺の愚かなコメントのせいで、潰してしまった彼女の楽しみ。


「……俺も怖いです」

 気づけば、口が動いていた。


 彼女が驚いた顔をする。



「また、同じことになるのが」


「……え?」


「ごめんなさい。あの時、電車の音がするってコメントをしたの、俺なんです」


「あの時、あなたの楽しみを潰してしまったのは、俺なんです」


 言葉を選びながら続ける。

「だから本当は、今回も関わらない方がいいって思ってました」


 一歩、近づく。

「でも」


「今回も同じ目にはあって欲しくない」


 まっすぐ見る。

「守れるなら、守りたいです」


「虹川ソラでも、黄瀬ミレアでもない。黄城さんをアパートの管理人として守りたいです!」


 沈黙。

 しばらくして。


「……変な人ですね」

 少しだけ、笑った。


「そうかもしれません」


「あの時のこと、この前桃西さんから聞きました。虹川ソラのことを、すごく反省してるって」


「本当にすみません」


「いえ、もうあの時のことはいいんです。あの時も一部のリスナーが暴走したから活動休止することになっただけで、健介さんのことは恨んでいないんです。それに今、アカケンさんとして、管理人の健介さんとして、優しく接してくださるあなたを知ってますから」


「今も不安でいっぱいでしたけど、健介さんのちょっとだけ……安心しました」


「いえ……そんな」


 って、えぇ?

 虹川ソラのことを桃西さんから聞いた?


 なんで……?

『クロマリンク』のことを聞いても黄城さんに言う理由はーー


「あっ!」

 黄城さんが明らかに動揺する。


「やばっ!えっと、その……」



「もう良いわよ!」

 ドアを開けて入ってきたのはアパートのみんなだった。


「ごめんね。お邪魔しまーす」


「えっなんで皆さんが?」


「当たり前です。赤石さん!」


「そうよ。みんなで電話してたのに、一切出なかった黄城ちゃんが、健介が部屋に来た時だけ顔を出しちゃって」


「もしかして黄城ちゃん、やっぱり健介くんのこと?」


「まぁまぁ……。ごめんね、みんなも心配でさ、赤石くんが部屋に入っていくのを陰から見てたんだ」


「そんな……みんな。……って、あっ!その……私」


「もう良いよ佳奈ちゃん。一緒のアパートの時点でいつかバレることだし。……まぁ、鈍感な健介だからバレなかった可能性もあるけど……」


「こんな現状だしね……」


「私たちのことも話して良いと思います」


「赤石くんなら、外に漏らさないだろうしね」


「私たち全員……実は、」


 彼女達が息を合わせる。

「「『クロマリンク』なんです!」」

お読みいただき、誠にありがとうございます。

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