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第13話 白色の幼馴染

「アカケン!」


 夜道。

 アパートへ戻る途中、背後から聞き慣れた声に呼び止められた。


 振り返ると、そこにいたのは——心だった。


 白町心。28歳。 俺の幼馴染で、小中高とずっと一緒だったやつ。


 今は俺が管理人をしているアパートの2階、3号室に住んでいる。


「よぉ、心」


「久しぶりってほどでもないけどね」


「ていうか、お前が“アカケン”って呼ぶの珍しくないか? お前はずっと健介だっただろ」


「……なんとなく」

 少しだけ視線を逸らしながら、心が肩をすくめる。


「あんたの高校生時代のあだ名、思い出しただけ」


「ふーん?」

 まぁ、深い意味はないか。


「それより健介、こんな時間に何してたの?」


「あぁ、これ」


 俺は手に持っていた紙袋を軽く持ち上げる。


「近くのショッピングモール行ってたんだよ。今日、『クロマリンク』のアクスタのグッズ発売日でさ」


「あー……はいはい」

 露骨に分かりやすい反応。

 こいつは昔からこうだ。


 ……俺の部屋のグッズ量を見たら驚くだろうな。心も俺がそこまでのファンって知らないだろうし。


「アニマイトで買ってきた。いやー、今回のビジュめっちゃ良くてさ」


「そうなんだ」


「これアニマイト限定なんだぞ」


「うん、分かった分かった」


 途中で遮られる。

「……相変わらずだね、あんた」


「何がだよ」


「好きなものの話になると、止まらなくなるとこ」


「いいだろ別に」

 俺はこんな俺が好きだし。


「で?心は?こんな時間に外出てるなんて珍しいじゃん」


「仕事」


「仕事?お前、在宅メインじゃなかったっけ」

 心が今、在宅で動画作成関係の仕事をフリーでやっているというのは前から聞いていた。


「まぁ基本はね」


 少しだけ間が空く。

「たまには外にも出るの」


「へぇ。じゃあクライアントの所とか?」


「……そんなとこ」

 どこか歯切れが悪い。


「なぁ、その仕事ってさ」

 俺は少し気になって聞く。


「配信者とか、そういう人達も関わったりすんの?」


 心の足が一瞬だけ止まる。

「……あることはある」


「マジか。いいなー」

 素直に羨ましい。


「『クロマリンク』とかも関わったりするのか?」


「……言うわけないでしょ」


「だよなー」

 そりゃそうだ。守秘義務ってやつだ。


「でもさ」


 俺はふと思いつく。

「お前、自分でやればいいんじゃね?」


「は?」


「Vtuber」


「……はぁ?」

 露骨に顔をしかめられる。


「いや、だって動画編集できるんだろ? だったら普通にいけそうじゃん」


「なんで私がやんのよ」


「いや、なんか面白そうじゃん。幼馴染が配信者とか」


「軽いなぁ……」

 呆れたように息を吐く心。


「でもあんたさ」

 ちらっと俺を見る。


「そういうの嫌いじゃなかった?」


「“中の人は知らない方がいい”って」



「あぁ、それは今もそうだよ」

 俺は肩をすくめる。


「無理に探るのは違うと思ってる。そういうので配信者が活動できなくなるのが両方一番嫌だしな」


「ふーん……」

 心がじっとこちらを見る。

 その視線が、妙に近い。


「……でもさ」

 一歩。

 距離を詰められる。


「もし“実はもうやってる“としたら?」


「え?」

 予想外の質問に、言葉が詰まる。


「いや、それは……ないだろ」


「……ま、いいや」

 心はあっさり引いた。

 くるっと背を向ける。


「相変わらずだね、あんた」



「だから何がだよ」


「好きなものには一直線なのに」


 少しだけ振り返る。

「一番近いものには、全然気づかないとこ」



「……は?」


 意味が分からない。

「それ、悪口か?」



「さあね」

 くすっと笑う。



 そして、そのまま歩き出す。


「ほら、アパート帰るよ」


「おう」


 数歩進んでーー

 心と歩幅を合わせる。




 ーー数分後

 アパートに着く。


「ねぇ」

 心は首をこちらに振り返らないまま。


「ちゃんと“私”も見なよ」

 一瞬の間。



 ーードクン

 心臓が、わずかに跳ねた気がした。


「……は?」

 だが、その意味を考える前に。




「じゃ、おやすみ」

 心はひらっと手を振って、階段を駆け上がり、部屋に消えていった。


 一人残される俺。


「……いや、どういう意味だよ」


 首をかしげながら、俺も自分の部屋へと戻る。


 ——まぁいいか。

 今はそれより。

 袋の中のグッズの方が大事だ。

お読みいただき、誠にありがとうございます。

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