チャンス
今生でのチャンスをくれという僕に対し、彼女は「少し考えさせてください」と言って帰って行った。
僕たちに時間の猶予はあるのだろうか?
いまこの間にも、ドージャ王は時間の巻き戻しを行おうとしているかもしれないのだ。
彼女と和解できた途端、また否応なしに11年前に戻される可能性だってある。
そうしてまた、何もかも忘れてしまうんだろうか。
そして彼女だけが、14歳になってまた思い出すのだろうか。
ならやはり、ここで和解しておきたい。
彼女が僕を信じて、関係を再構築するのだと決意してくれたなら、時間が巻き戻しされてもきっとまた思い出してくれる。
彼女が帰った後、リチャードを呼んで事の顛末を話した。
リチャードもドージャへ送る使者の面談を終えた事を報告してくれた。
後は彼女からの色よい返事を待つだけだ。
いや、ただ待つだけでは駄目だ。
もう一押し、僕から行動すべきだ。
そうだ、例のサプライズプレゼント大作戦。
誕生日以外に彼女へプレゼントを贈る。
贈るとしたら、やはり宝石や貴金属の類いだろうか。
奇をてらって変わったものを選んで外すよりは、定番の物が良いだろう。
僕は急いで宝石商を呼びつけた。
やってきた商人は、とにかく値のはる物を薦めてきたが、薦められるままに買ったのでは僕が選んだことにならない。
彼女の顔を思い浮かべて、彼女が身につけたところを想像しながら、じっくりと宝石を選んだ。
彼女に喜んでほしくて、ワクワクしている。と同時に、受け取れないと拒絶されたときのことを想像して、胸がチリチリと痛む。
心が忙しい。ひどく落ち着かない。
情緒不安定を極めながらも僕は宝石を選び抜き、ネックレスをオーダーした。
ネックレスが出来上がる前に、時間が巻き戻ってしまうかもしれない。
それでも、僕は彼女のためにプレゼントを選んだという事実に満足している。
今はただの自己満足だが、彼女が受け取って満足してくれたら嬉しい。
後はそうだ、誓約書。
もう一生海に出ないと彼女に誓おう。
もし約束を破って海に出たときには……王位継承権を弟に譲る、これでどうだろう。
国王陛下に話を通さなくてはいけない。
船上パーティーの取り止めをすぐに対処してくださった父上だが、さすがにこの話を認めてくださるのは難しいだろうか。
駄目元精神で話してみるしかないよな。
何でもやってみるに限る。




