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誓い

翌日、彼女はドージャ王への手紙を持って僕に会いに来た。

一晩中推敲したのであろう証拠に、目の下にうっすらとくまがある。


「どうぞご一読ください」

「いいの?」

「もちろん。殿下のお名前で使者を立てて頂くのですから、内容はしっかりご確認ください」


封のされていない手紙を取り出して、目を通した。

なるべく簡潔に、しかし丁寧に、力強く訴えるようにと工夫されて纏められた文章は見事だった。彼女には文才があるようだ。


「良いと思う」

「それと、こちらを同封で」


と彼女が渡してきたのは、例の盗賊の似顔絵だ。


「私の知っているヒューゴーと、王の知っているヒューゴーが同一人物であると証明できれば、この話を信じてもらえます」


「ああ、確かに……。僕も手紙を書いて、これに添えて送るよ。使者はリチャードが手配中だ。手配出来次第、出発させる。なるべく急ぐよ」


「ありがとうございます」


少しの沈黙が流れ、では今日はこれでと立ち去ろうとした彼女を引きとめた。


「待って。話がしたい。今後の僕たちについて。そのために、まず君の前々回と前回の人生について、もう一度詳しく聞かせてくれないか」


「もう一度ですか? 面白くない話ですよ。殿下にとっても、わたくしにとっても」


「ああ。初めて聞いたときは、信じられない気持ちもあって、ちゃんと受け込められなかったというか……。リチャードに言われたんだ、どうせ僕のことだからさらっと聞き流したんじゃないかって」


ばつの悪さを感じながらそう言うと、彼女は少し口角を上げた。


「では遠慮なく、語らせていただきますね」


彼女の側に寄り添って、耳を傾けることを意識した。

前々回の人生で、彼女は随分と僕に譲歩してくれていた。僕が漂流先から連れ帰った娘を愛人にして、共に暮らすことを公認し、王太子妃としての務めをきちんと果たそうとしてくれていた。

なのに僕はどうしても島の娘を正式な妃にしたくて、卑劣な手を使って彼女を排除したのだ。

国のためにと割りきって、公務に尽力していた彼女を。


「それはさぞ悔しくて憎かったよな……僕を刺し殺したくなる気持ちが分かるよ」


がっくりと肩を落として言った。

彼女が僕を殺り損ねた二度目の人生でも、僕は島の女に呆気なく惚れ込んで、彼女を失望させたらしい。


「記憶喪失の殿下がもしわたくしのことを思い出したら、真実を打ち明けるつもりでしたが。殿下は結局、わたくしのことを最後まで思い出しませんでしたから、船から見送ったのです」


「済まなかった。何もかも覚えていないんだ。だからといって無かったことにはならない……そうだよな。君は何度も辛い思いをしたんだから。この僕のせいで。悪かった」


自然と謝罪の言葉が口から出た。

彼女の瞳が大きく揺らいだ。

鉄仮面のように無表情だった顔がくしゃりと歪んだ。


「……本当にそうよ。全部あなたのせい。カースティン、カースティンって、馬鹿の一つ覚えみたいに。彼女を妃にしても、子をもうければ死んでしまうのに。そう教えてあげたのに馬鹿じゃないの?」


ぼろっと彼女の大きな瞳から涙がこぼれ落ちた。


「ああ、馬鹿だ。僕は馬鹿だった。今すぐ殴ってくれ。何ならもう一度、刺してもいい」


彼女は泣くのをやめて怒った。


「簡単に言わないで!」

「ごめん、簡単じゃないよな。僕も死にたくはない。生きて、君との関係を再構築したいんだ。誓う。今度こそ、君を裏切らない。その島の女とは出会わないようにする。一生海に出なければいいんだよな。約束する、僕はもう一生海に出ない。そう誓約書を書くよ」


彼女の話を聞いてから、どうしたらいいのかゆっくり考えるつもりだったが、もう心が決まってしまった。


「海に出なければ、船で遭難することもない。そのカースティンとやらに出会うこともないだろう」

「いいんですか、もう船に乗れなくて。船、好きですよね?」

「いいさ。僕は漁師じゃない。船に乗らなくても生きて行ける」




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