5.輪廻する世界 第二章 彼の書く物語と彼の世界渡り 01かつて問われた答え
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PN光坂影治
世界渡り、一琉影治は始まりの時に降り立った。
いや、ここまでに降り立たなければならない時はいくつもあった。
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彼が最初に夢について考えた時、一番最初に浮かんだ夢
小説家。
彼は本は読んでも、漫画ばかりだった、そのときは。
それでも、夢を考えた時に最初に思い浮かんだ夢は小説家だったのだ。
「ねえ、影治くん。言葉、残そうよ。
最初に浮かんだ夢を否定していいのかって。
やる前から、諦めていいのかって。
ただ自分の中からなんとなく出てしまった言葉でも夢は夢だよ。
確かに彼はそれとは違う、人が堅実なんていう夢を持とうとしている。
でもさ、小学生? 中学生?
このタイミングで彼に夢を聞くのも確かによくないけど」
「そうだよ! 光ちゃん! こいつにとって、言葉にするってかなり重要なことだよ?
しっくりする言葉が出るまで、答えを出さないコイツにだよ?
部活動とかの好きなことに関する答えはわからないと、
答えをわからないにするコイツにだよ?
中学生の時の夢を答える機会なんて、
進学することにして乗り切ろうとした――――
あっ」
影治は失言に気づいた。すかさず光は指摘する。
「影治~~く~~ん!
なんで、その言葉を今、このときに使わなかったの!?」
「だってさ、小学生の夢を答える作文だよ!?
そんな夢のない答え書いたら!」
「なら、小説家なら夢あるじゃん!!」
「それは――――――――」
「それは?」
そうそれには理由があった。
影治は光にその理由を答える。
「それは目を開いて見る夢か? それとも目を閉じて見る夢か?
だってさ」
「え?」
「小学生の時にそう言った先生がいたんだよ。
今の彼、えっと、本気で物語を今、書いている彼なら、年齢が少し高めなのも、
自分の文章力や、キャラクター構成の至らなさ、ひっくるめて、なんとかするから、
本当になりたいのは、たとえ兼業でも小説家だって少なくとも心の中では答えるんだろうけど」
「はあ~~、影治くんの自信のなさの面影をみた気分だよ」
影治の理由に対する言葉に対する光の返答に、影治は異議を唱える。
「失礼な! 世界渡りを始めてからの俺は結構、自信ついたほうだよ!
それに今の彼だって、歌姫の――――えっと彼女って言ったら誤解されるかな?
単純に歌姫の――――そう歌姫のコ!
歌姫のコの歌に出てくる無理な問題には答えを――――」
「影治くん、もうそれいいから、濁さないで。
私も知っているからその歌、
大人になるとはどういうことか20文字以内で簡潔に説明せよでしょ?」
影治は光がその歌を知っていることに驚いた。
だが、光は続きを問う。
「で、何、その問題、答え持っているの!? 私の納得しない答えだったら許さないよ」
「こういうことだと言える大人になること!
読み仮名で数えて、むしろ!も入れて、20文字!」
「ふ」
「ふ?」
「フフフ、アハハハハ」
「ひ、光ちゃんが壊れた」
影治は言葉とは裏腹に安心していた。
この下りで、冗談半分だが、泣いた人を知っていたから。
「なにそれ!? 私は納得だな。
それって、そういう生き様を見せられる大人になることって意味でしょう?」
「あ、やっぱり、光ちゃんならわかる?」
「わかるよ。私だって、中二病的な言い方すれば、『覇王の救い』だよ。
影治くんの救い。ただ一人、影治くんを愛し、愛されることで、救われたと思えるほどの愛を与える光さんだよ?
忙しくしてたってそのくらいの愛を少なくともいだいてはいるよ」
多少はいい雰囲気になった二人だが、本題に戻る。
「で、私が言いたいのは――ああ、もうここは影治くんがわかる人だと信じて、次に行こう!
次、まだ降り立たないんでしょう?」
「ああ、次だね」




