3.世界渡りのプロローグ 第三章 03神秘に明文はなくとも理は裁く(改稿一回目)
「罪の土地の人達はわかっていないようだ」
「冬彦?」
唐突に冬彦の呟いた言葉に千秋が疑問の声をあげる。
「異能が使われた」
「えっ」
冬彦はあり得てはいけない違反を感じ、溜め息と共に届かないと思いつつも罪を犯した人達への言葉を紡ぐ。
「はあ〜、法律は確かに人を守るものだ。ただ、ある意味では罪を犯した人も守っているんだよ。」
「え〜、罪を犯した方も!?」
千秋は冬彦の言葉に口では反発しつつも、内心ではわかっていた。
冬彦は罪を犯した人達もあんじている。
冬彦の叱責は相手のためを思い、本気で改心してほしいと思っての言葉なのだ。
「だって、そうだろう?現実で罪を犯したらこの程度の罪でいいですよって言っているんだ」
「それを異能を使って、罪を犯しても、バレないからいいと思っているのかい?」
「バレないわけないだろう?」
「少なくとも世界でその事実が一度、起きているんだ。人は騙せても
世界だけは騙せない。
わからないようなら付け加えよう。
異能が妄想? 他の人の勘違い?
それは自分自身が何より知っているんじゃないかい?
自分自身も騙せていないのに、世界を騙せるわけがないだろう?
まだ付け加えよう。
自分自身という世界の一部を騙せていないのに、世界を騙せているつもりでいないでくれ!
加えよう。
異能で罪を犯すということは異能以上の神秘で裁かれることを意味する。
輪廻転生。死後の世界。
そういう面で裁かれてもいいのかい?
それだけではない。むしろそういう面で裁かれることすら、その人を改心させるための救いですらあるかもしれない。
そして、付け加えよう。
今、人類が発見できているのは宇宙までだが、その外、あるいは上位の世界がないと誰が決めたんだい?」
冬彦はただ改心して欲しい一心で罪を犯すことの意味を伝える。
罪を犯すということは、たとえ世界を改変したとしても改変する前の世界で一度おこったことは変わらない。
罪とは一度おかすと取り返しがつかないのだ。
だから、唯一の救いである改心を神秘にさせないために、自らしてもらうために言葉を紡いだ。




