3世界渡りのプロローグ 第一章 02(改稿三回目)名前をつけ変えてくれる確かにそこにあるもの
「天典君、今の話。もう少し聞かせてくれる?たとえ、当人達が必要だと言ったとしても、異能力を許容する場合があるのは何故なの?」
春美は俺のことを信じてくれている。
それが俺には異能があるからわかる。
その上でなぜそうなのか、その理由を聞いている。
異能がなければ多分、責められていると勘違いーーいや、異能なんてなくても、この声ならわかっただろう。
この優しく全てを包み込む声なら。
俺は春美が近くにいてくれる幸せを感じながら問う。
「春美はさ、心理テクニックなら許容できる?」
「えっ、どうかな? 私は‥‥ちょっとわからないかな」
「じゃあさ、俺との気持ちは何?」
俺は少し怖がりながらも、春美のかつての言葉をーーかつて自分自身で見て・聞いて・感じたーー言葉を信じて問う。
「恋!‥‥だよ」
春美は恋だけ即答して、照れ隠しで付け加えた。
そう今はそれでいい。
異能でわかる。
ただただ無邪気に迷いなく口にした言葉だ。
俺はそれを嬉しく思いながらも、頭では考えている先の理論を答える。
「恋愛‥‥ではないんだね」
「違っ、恋あ‥‥ううん、愛! 愛だよ」
「ハハハ、いいんだよ。今は恋でいい。何かで読んだんだ。恋とは衝動的で強くすごい力を秘めたもので、愛とは長くしなやかに続くもの。だから、俺は恋愛という名前をつける」
「うぅ、ずるいなぁ」
俺はそんな反応をかわいいと思いながらも、話を軌道修正する。
「じゃあ、それを操作できる異能に感じる感情は?」
「恐怖」
その返答がくることは異能でわかっていた。
だからこの質問をぶつけた。
そして、だからこそ話が続けられる。
「じゃあ、その異能を喉から手が出る程、欲しがるのはなんて表現する?」
「恋焦がれる‥‥ですね」
やっぱり、ここで神父さんが口を挟んだ。
「そう、同じものに対して人が抱く感情に恐怖と恋、両方の名前がつくことがあるんだ」
「‥‥」
春美は少し考え込むように沈黙する。
そして俺は重ねる。
「なら恐怖と恋は同じもの?」
「そんなわけない!!」
「そうだね。じゃあ心理テクニックで感じた感情は?」
「うっ、それは」
「私にはね。2つの感情がある。春美として恋愛感情だって認めたい感情。もうひとつは罪仙としてそれは何かの勘違いだって否定したい感情」
春美はーー
「春美は罪仙と春美の間で揺れ動いているんだね」
「名前はその人の在り方を示すもの」
「うん」
「だから、君が君自身できちんと君が信じたい気持ちを選んで」
「うん。って、私は心理テクニックを受けたわけではないけどね」
「でもね。たとえ心理テクニックが原因だとしても、多分、名前はもう自分の中で答えは出ているんだと思う」
「どうして」
「可能性はたくさんある。もうそんな心理テクニックは知っていたから効かない人もいれば、知っていても何でってなってしまう人もいる。逆に知らなかったからその感情を抱いてしまう人もいれば、何言っているのコイツってなる人もいる」
「そうだね。多分、恋に落ちる人は気付いたらその時には落ちているんだね」
俺はこれからのことを問う。
あえて、自分が名付けた名前を使って。
これからの俺達の感情がそうなるように。
「春美は俺との恋愛感情をどうしたい?」
「大切にしたい!」
「じゃあ、神父さん。あなたは恋焦がれる程、異能を欲しがる人達はその感情をどうすると思いますか?」
「あらゆる手を使って強引に叶えようとする人達をたくさん見てきました」
「なるほど。そうですか」
予想していたことだが、少しそれを残念に思いながら続ける。
「同じ名前でもこんなに違う」
「確かにそうですね」
「まあ、こんなふうに感情に名前をつけて、大切にして‥‥う〜ん、俺なら成長したり、逆に強引に叶えようとして醜く変貌したり‥‥」
「なるほど。それは成長が望ましい」
神父さんは俺の言葉の続きを待たずに言葉をわりこませる。
「ありがとうございます。まあ、それはともかく、
なんて名前をつけて、それが何であろうとも、どうするかはその人次第なんだ」
「なるほど。だから変えようのない現実を変えるためのエネルギーを人から借りるのはアリということですか?」
「ハハハ、そこは神父さんが決めかねているところでしょう?」
「やはりあなたの異能にはーーいえ、あなたにはかなわない。あなた達に相談してよかった。大切なことはどうすべきかで決めるべきだと言うのですね」
「いええ、どうすべきかではない。それだと誤解する人もいるでしょう。
どうしたいかを踏まえた上で、どう変えるべきかです。どうすべきかなんて関係ない。
したいことをするために、自分をどう変えるべきなのか。その感情をもって、成長するのか、叶えようとして醜く変貌するのか。
その感情の過程なんて二の次です。
それを納得し、それがそれだと信じたなら、その感情をもってどうするかですよ。
だって、これは本の受け売りですが、今その感情を抱いている俺はここにこうして存在しているのですから」
「ええ、確かにあなたは運命に追いついた存在だ」
「? その言葉はわかりませんね」
大切なことは間違えない。
たとえ間違えたとしてもできるだけ正しくあろう。(オリジナル)
十の幸せに自分の一を足して、十一にして送り出そう(鋼の錬金術師)




