LSX70は――
*
荒井を縛っていた縄はかなりきつく結ばれていて、解くのに十分ほど時間がかかった。
「ふう、どうもあたしはMじゃないみたいね」
荒井は手をぶらぶらさせながら言った。手首には焼印のように縄の痕が残っている。
「おめえはどっちかつうと、いや確実にSだろ」
「む」
荒井はぎろりと俺を睨んだが、すぐに柔和な笑みを浮かべる。
「なんとか助かったね」
「ああ。……でも、なんだったんだろ。さっきの」
鉄球に、短剣。
いや、そもそも小田銀四郎の存在もわけ分からん。
「……そう言えば、俺ってまだ生きてるな。俺は死ぬ気でここに来たんだけど」
「あ! たしかにそうだよ!」
荒井は慌ててスカートの中に腕を突っ込み(!)、もごもごと手先を動かして一枚の写真を取り出した。たぶんLSX70で撮った俺の写真なのだろう。
…………。
「――えへへ」
荒井は不敵に笑うと、写真をビリビリに引き裂いた。「ミッションコンプリートってやつだね!」
「…………」
「あれ、嬉しくないの?」
「……お、お前、その写真さ」
「うん、言わずもがなあんたの写真だよ。寿命はばっちり桁違いに上がってた! ばっちおっけ」
「その写真、どこに保管してたんだ?」
「パンツの中」
荒井は即答した。「どんな金庫よりも安全だもん。小田銀四郎相手にだって、バレなかったし」
「そりゃバレねえよ!」
うわうわうわ。
嬉しいけど、なんだかな。なんだかな!
俺は苦笑した。やれやれ。
どうにも思考が追いつかない。喜んで良い場面のはずなのに。
……引っかかったままの問題があるからか。あの鉄球と短剣、逃げた小田銀四郎、それに――
「いずれにしてもLSX70は壊したほうが良さそうね」
そう、LSX70だ。
「そういえば荒井、LSX70はどこにあんだ? まさか……」
「馬鹿! どこ見てんのよ変態!」
おめえに言われたくない。
「元の場所よ。おじいちゃんの机の引き出しの中。……何としても破壊してやる」
「……いや、俺がやるよ」
荒井太刀善は人を殺めているような気分になって分解を断念した。
荒井はそれをやってのけた。
それを、俺が復元しちまった。
だから、破壊するのも俺なんだ。
「頼む荒井。俺にやらせてくれ」
荒井は俺の目をじっと見つめ、それから静かに言った。「分かったわ。任せる」
だが、LSX70は俺が壊すまでもなかった。
それから一時間後、俺たちはすぐに荒井太刀善の部屋に行き、机の引き出しを開けた。LSX70は破壊されていた。
復元も不可能なほどに。




