いとおしい日常
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残り十日間のうち、九日間は穏やかに過ぎ去った。
いつも通りに、ごく普通に。
もしモコが俺を説得していなければ、今頃俺は沖縄にでも行っていたことだろう。でもそんな半ばヤケクソのようなお遊びも、終わりだ。
俺は再び日常に戻った。
学校に行き、授業を受け、友達と馬鹿話に花を咲かせ、写真を撮り、現像した。
英輔と賀田川はいつもどおりベッタリで、モコはやっぱりお子ちゃまで、荒井も少しは角が取れたけどそうそうキャラを覆せるわけもなく皆の前では無口キャラだった。
意外だったのは、あれだけ護衛すると言っていた荒井が何の動きも見せなかったことだった。俺はまた学校でもあの特務仕様の格好で来るかと内心冷や汗をかいていたのだが、普通にセーラー服で登校していた。もちろんライフルなど装備していない。
まあ、死ぬ日以外を護衛しても意味はないのか。そういうこと、なのか。
それにしたって、少しぐらい作戦でも立てたほうがいいと俺は思うのだけど、荒井は何を考えているのか全く取り合ってくれなかった。
「大丈夫、何も心配することないわ」
と、繰り返すだけ。
心配するなと言い張られてしまうと、俺としてはどうしようもない。死ぬ予定の日にならないと何が起こるか分からないのだから。通り魔野郎の線が強いとはいえ、もしかするともしかして、隕石が落ちてきちゃったりもあり得る。
あり得ないか。
とにかく、俺は日常を満喫することにした。
いつもと変わらず、いつもと同じ。
「いつも」という言葉が、その意味とは裏腹にこれほどまでに期間限定的に聞こえたのは生まれて初めてだった。
いつも。
それが今、俺はとてもいとおしい。




