占い
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「え、ツヅク、知り合いなの?」
荒井が訊いた。
「ううん、まあそうだな」
そうなのか?
ま、いいや。
「なんだい、早速来てくれたのかい。しかも彼女と二人きりで来てくれるなんて、光栄だな」
小田銀四郎が俺と荒井を見比べながら言った。
「か、彼女?」
と荒井。
「二人きり?」
と俺。
「あ、あの、私もいるので三人なのですが」
と、俺の右隣から居心地悪そうにモコが呟いた。
「え――」
小田銀四郎はハッとして、首をやけに意識して左に回す。「おっと、これは失礼した。小人のように可愛らしくて気付かなかったよ」
「可愛いだなんて、そんな」
「おいこら、『小人のように』が抜けてるぞ。ちっこくて見えなかったんだぜ、お子ちゃま」
「むむむ、私はお子ちゃまなどではありません」
「なるほど。これはもしかして君が所属する写真部の集まりか何かかな?」
「そうです。あの、荒井に何を訊いていたんですか?」
俺は荒井を指差した。
この銀髪男の動向が、俺は気になったのだ。
「君のときと同じだよ。首からカメラを提げていたからね。どんなものを使っているのか気になったんだ」
「はあ、そうですか」
やっぱそうか。
小田銀四郎が言うところの「奇妙なカメラ」を荒井が使っているかどうかを調べたに違いない。
俺は荒井をちらりと窺った。
荒井は無表情に自分の首から提げているカメラに視線を落としている。何を考えているのかよく分からない。
でも、小田銀四郎がまだ人が死ぬカメラがどうこうと言っていないことは分かった。もし荒井がそれを耳にしていたら、もっと警戒しているだろうから。
「そうだ、今日はサービスで特別に半額で占ってあげよう」
小田銀四郎は言った。「まあ、お客さんも全然来てないからね」
「そういえば今年は初詣でおみくじを引き忘れてしまったのでした。ここで運勢を知るというのも良いかもしれません」
モコは何やら意気込んでいた。
おみくじと占いって、なんか違うような気もするけど。
「……あたしも占ってもらおうかな」
え。
モコはともかく、荒井も占ってもらうのかよ……。意外だな。
モコは財布から五百円玉を取り出し、小田銀四郎に渡した。それから小田銀四郎に手の平を見せる。ってまだ小田銀四郎が手相占いかどうかも分かんねえじゃねえか。
と、思ったけど、小田銀四郎は普通に手相占いを始めた。
カメラを見たときと同じように、入念にモコの手の平に鋭い眼差しを向ける。でも時折ちらちらとモコの首から提げられているカメラにも視線をやっているのを、俺は見逃さなかった。
「――なるほど」
小田銀四郎は「ふむ」と頷いた。
「どうでございましょう。将来は豊満なバストを武器に殿方を虜にし、やがては世界を支配する大いなる存在になれますでしょうか」
「お前の目的は世界征服かよ」
思わず突っ込んでしまった。突っ込まずにはいられん。悔やまれるのは『豊満なバスト』という部分に突っ込めなかったことだ。お子ちゃま体型のモコの将来に、豊満なバストほどイメージできないものはない。
「そうだね、君には得意なことがあるね」
「あります」
あるの?
「それを伸ばしなさい。そうすれば、きっと幸せを掴む日が来るよ」
「分かりました。伸ばして伸ばして伸ばしきります」
伸びすぎて垂れ下がらなきゃいいけど。
「じゃあ次は君だね」
「…………」
荒井は無言で小田銀四郎の前に立ち、手の平を差し出した。
小田銀四郎はまた例によって真剣な目つきで見つめる。
「――――――――――ふむ」
「…………」
小田銀四郎は妙に長い時間、荒井の手の平を凝視していた。
商店街の賑わいから隔絶されたような、不思議な雰囲気が俺たちを包み込む。ふと空を仰ごうとしてデスサイズが視界に飛び込んできたから、俺はぎょっとした。『カット・デスサイズ』のデスサイズ――死神の大鎌だ。もちろん飾りなのだろうけど。
「――なるほど」
「……どうなんですか、私の運勢」
「悪くない。むしろ希望があると言っていい。今、君が希望だと思っている何かを信じ、前へ進むといい」
「分かりました」




