撮影会当日
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撮影会。
それは我が写真部が毎月一回行っている行事で、部員全員が同じ場所に集合し、その周辺を歩き回って写真を撮る。ただそれだけだ。うん。
同じ場所を散策して撮影したら似たような写真ができないか、と思われるかもしれない。たしかにそれはある。
一年の頃なんかは俺と荒井の写真がほとんど同じ風景で同じ構図だったりして「ツヅク、あたしの写真パクッたわね!」などと怒られもした。
それでも、俺はこの行事に意味はあると思っている。
写真ってどうしても単独行動になって、部員同士の交流が浅くなりがちになってしまうから。まあ、うちの写真部はたとえ撮影会がなくても十分にコミュニケーションは取れていると思うけど。荒井以外は。
――で、今日は撮影会なわけ。
集合場所は駅前広場にした。モコの要望どおり地元撮影と相成ったのだ。
午前十時、日曜日、天気は快晴。歩く人たちの顔もどこか楽しげできらきらと輝いているようにさえ見える。絶好の撮影日和だ。
気がかりだった賀田川と英輔もちゃんと来てくれた。二人とも愛用のコンパクトデジカメを手に持ち、既にパシャパシャと撮り始めている。よかった、元気そうじゃないか。
もちろん地元撮影を希望した張本人モコも来ている。
白いワンピースを着て、肩からでっかいカメラバッグを提げ、もちろん首からはごつい一眼レフを提げている。その酷いミスマッチな格好に俺は苦笑する。
「先輩、私の私服姿があまりに魅力的だからといっても、そんなにじろじろ見られるとさすがの私も赤面してしまいます」
などとモコは勘違いしていた。
放っておくことにしたのは言うまでも無い。
残る面子は――
「あとは部長ですね」
モコは言った。
「そうだな。ったく、あいつが時間通りに来たことなんか一度もないぜ」
「仕方ありません。きっとどのカメラにするか吟味されているのですよ。なにせあの有名写真家、荒井太刀善のお孫さんですから。カメラやレンズもいっぱいあるでしょうし」
「はーん。そういうもんなのか。俺はこれ一台しか持ってねえからよく分からんけど」
「センパーイッ! 見てくださいよぉ」
賀田川が物凄い勢いでデジカメの液晶画面を見せてきた。放尿中の柴犬が写っていた。
「…………」
「かわゆいですよね~」
「……そ、そうだな」
まあ、人それぞれ好みあるわけで、むしろここまで好みがかけ離れていたほうが撮る風景がかぶることもないかなと、俺はとっても前向きに考えることにした。
「あ、部長がいらっしゃいました」
モコが人ごみの向こう、バス停のほうを指差す。
「ちっ、やっと来たか」
モコの指差すほうへ目をやると、こちらへ歩いてくる荒井が見えた。
こう距離を置いてみると、荒井が並々ならぬ美少女であることは認めなくてはならない。そこらを歩いている婦女子たちに決して埋没しない、それどころか周囲の婦女子たちを埋没させてしまうほどの可愛らしさをヤツは周囲二十メートル圏内に振りまいている。
でもそれはあくまでも顔だけの話。
「おまたせ」
荒井は俺たちのところに来ると、短くそう言った。
赤い繋ぎに安全靴という格好だった。どう考えても女子高生の私服姿とは思えない。
モコと違い、荒井は首から一眼レフを提げているだけでカメラバックは持ってきてはいない。繋ぎのそこかしこについているポケットにフィルムなどの細々としたものはしまい込まれているのだろう。
こいつはこいつでミスマッチな格好だよなぁ……。
でもこの繋ぎスタイルが荒井のいつもの私服姿なのだ。この前のデート(ではないか)の時は、尾行するために普通の格好をしてきたのだろう。やれやれ。
気を取り直して……。
「よし、じゃあこれで全員集合したな。じゃあ、昼になったらひとまずまたここへ集合してくれ」
「かしこまりました」
「了解っす」
「りょーかいちゃんでーすっ!」
「……分かったわ」




