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【第9話】「ブラッククランの闇と、新人防衛作戦(前哨戦)」

あの最悪な裏切りと屈辱の出会いから、1週間が経過した。

「おいおいレンくん! 今日も地味〜に義務(ノルマ)の足踏み(レベル上げ)かね? 相変わらず効率の悪いことで、ギャハハハ!」

格安ダンジョン『初級魔力層』の受付や通路の死角で、ワシは和尚(ハゲ)だからさぁと調子よく自分のハゲ頭をペシペシ叩く【はげゴブリン副長】に遭遇し、執拗なイジり(マウント)を仕掛けられる日々が続いていた。

あの徹底した隠蔽型・狡猾ビッチであるアイ先輩は、もちろんカズキ先輩や周囲に自分の本性がバレないよう、大っぴらにロビーで和尚と結託するようなヘマはしない。カズキ先輩の死角で、和尚が俺やタダシを大声で小馬鹿にする(イジる)のを、薄気味悪い絶対零度のデスアイでただ冷酷に見つめているだけだ。

和尚はアイさんのその顔面評価の蔑みを【強さの基準】だと完全に勘違いしているため、俺たちのことを「見込みもない最弱の雑魚」だとナメ腐り、自分の都会の大人数パーティーへの勧誘ポーズ(引き立て役)として、毎日飽きもせず俺たちを踏み台にし続けていた。

だが、俺は、この1週間、屈辱に耐えながら冷徹に情報を集めていた。

スキルとかそんなものは関係ない。

前世でブラック企業に勤め、過労死寸前まで追い詰められた俺の脳(経験)が、あのハゲの笑顔を見た瞬間に強烈な拒絶反応(アラート)を鳴らしていたのだ。

「最初は優しくて、人の良さそうなフリをして調子よく近づいてくる奴ほど、裏で人を使い潰す最悪の闇を隠している」

前世の地獄で嫌というほど学んだその最悪なファクトが、俺の足を動かした。俺は自らの意志で、これまで色んなダンジョンを試す中で知り合った『過去のパーティーメンバーのつて(人脈)』を頼り、あのハゲのクランの裏情報を冷徹に調べ上げたのだ。

そして返ってきたのは、前世のトラウマを遥かに超える、背筋が凍りつくような最悪の真実だった。

『あそこのクラン? 絶対に近づくな。都会の華やかな看板の裏で、無茶な行軍を繰り返して【常に死人を出し続けている最悪のブラックパーティー】だ。都會じゃ悪評が広まりすぎて誰も寄り付かないから、名前を変えて、何も知らない地方の初心者ダンジョンまで“新しい使い捨ての駒”を騙して引きずり込みに来てるんだよ。現地の管理者のアイって女にも、パーティーの若いイケメン冒険者を裏で何人も紹介して、完璧に懐柔して口を封じてるらしいからな』

「……なるほどな。だからあのハゲ、監視役(ビッチ)の裏を完璧に握った上で、こんな田舎までわざわざ出張ってきて、新人の使い捨ての駒を物色してたわけか」

パズルのピースが、すべて最悪な形で噛み合った。

人を使い潰して死なせる本物の人殺しクランの首謀者。それが、あの和尚の正体だ。

俺の胸の奥の正義感が、怒りで青白い炎を上げて爆発した。

家が近いから通ってるだけのダンジョンだけど、何も知らない未来の英雄(新人冒険者たち)が、あのハゲの調子の良いイジり芸に騙されてブラックパーティーの奴隷にされ、死ぬのだけは絶対に黙って見てられない!

俺は夜、ダンジョンの閉鎖後に、人目を忍んで新人衛兵のタダシを呼び出し、手に入れた情報のすべてを共有した。

「な、何ということだ……!!」

タダシはショックで拳を血が出るほど強く握りしめ、顔を真っ赤にして憤怒に震えていた。

「新人をスカウトするためのポーズとして、私やレン殿、お爺さんにあんなに優しく接していたというのですか……! 都会で人が集まらないから、地方の無垢な若者を使い捨てるために……ッ!!」

「ああ。あいつ、アイさんを若いイケメンで完璧に懐柔してるから、ギルドの公式な権力じゃ動かせない。それに、ダンジョン外の安全地帯じゃ規約違反で私闘が禁じられてるから手が出せない。……だったら、場所は一つしかないだろ」

俺は死んだ魚の目をギラリと燃え上がらせ、タダシを見つめた。

「無法地帯のダンジョン内(フィールド)だ。あいつは明日、また俺たちを最弱の雑魚だとナメ腐って、通路の死角でしつこいイジり(攻撃)を仕掛けてくる。そこが、あいつの処刑場だ」

「レン殿……。しかし、相手はB級上位の実力者! 危険すぎます!」

「心配するな、タダシ。俺の【不屈の正義】は、相手の理不尽を3回直撃で喰らえば、4回目から完全無効化する[

。あいつが油断して大技を放つその瞬間まで、俺が身体を張って3回耐え抜いてみせる。タダシ、お前は新人の冒険者たちをあいつの視界から遠ざけて、退路を確保してくれ」

「――応ッ!! 私はギルドの衛兵! 新人たちの命と、レン殿の正義、命に代えても守り抜いてみせますッ!!」

俺の熱い覚悟に魂を震わせたタダシが、涙目を拭い、固い握手を交わしてきた。

徹底して本性を隠す狡猾なアイ、何も知らずに使い潰されようとしている新人たち、そして完全に俺たちを最弱だと勘違いして油断しているはげゴブリン副長。

因縁の1週間を経て、素人転生者と真面目な衛兵による、ブラッククランのハゲを合法的に圧殺するための【新人防衛作戦】が、今、水面下で静かに発動した――。

(第9話完


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