↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
7/64

【第7話】「活動報告:徹底解剖! 田舎の格安迷宮の真実」


やぁ、読者の皆様。

日夜のレベル上げ(日課)をこなすため、家から徒歩3分の格安ダンジョン『初級魔力層』に通い詰めている素人転生者のレンだ。

ここらで一度、俺が毎日お世話になっている(あるいは精神をゴリゴリ削られている)このダンジョンと、日々遭遇する「あの怪異」について、ギルドの公式資料(俺の偏見)を交えて詳しく説明しておこうと思う。

まず、この『初級魔力層』最大の売りは、何度も言うが入場料(エントリー料金)が異常なまでに安いことだ。

のどかな田舎にあるため、基本的には初心者冒険者の訓練用、あるいは近所の一般人の運動不足解消フィールドとして運営されている。

実はこのダンジョン、田舎のさびれた場所にあるくせに、なぜか常にギルドの職員(監視員)が常駐している。

理由はシンプルで、ここが【初心者や子供たちも日常的に立ち入る『公営』の施設として運営されているから】だ。安全管理のために職員を置くことが、領主の法律で厳格に義務付けられているらしい。

出現するモンスターは、主に『スライム系』や『昆虫系』の雑魚ばかりだ。

魔物の種類自体は無駄に豊富なのだが、どれも信じられないほどに弱い。

修行中の俺のように、普通に初心者用の剣でペシッと一太刀で叩けば、何の問題もなく一瞬で綺麗に潰れて消滅する。

――だが、ここからが最重要(重要)なポイントだ。

このダンジョンに湧くモンスターどもは、どれだけ弱くて簡単に潰れようが、【倒せば『確実に、100%固定で1ポイント』の経験値(ステータス)になる】という、神がかった神仕様を持っていた。

チート能力も貰えず、冒険の経験もない素人の俺。

そんな俺が、超ハイリスクな固有スキル【不屈の正義(アブソリュート・ジャスティス)】を使いこなす(最初の理不尽な直撃3回を耐え抜く)ためには、肉体と精神の基礎数値を死に物狂いで底上げするしかなかった。

だからこそ、どれだけ弱くても「確実に経験値になって身体が鍛えられる」この格安ダンジョンは、俺にとって命綱とも言える、最高の基礎体力育成所(レベル上げスポット)なのだ。

家からめちゃくちゃ近い(徒歩3分)というメリットも合わなり、俺はここで毎日確実に経験値を積み重ねている。

だからこそ、本来は初心者や子供でも安全に、平和にレベル上げができるはずの場所なのだが――現実は甘くない。

このダンジョンが毎日地獄の汚物エリアと化しているのは、【簡単に潰れる雑魚モンスターを相手に、わざわざ無駄にクソデカい大技をぶっ放して『俺つえー』がしたいだけのアホ冒険者どもがいるから】だ。

普通にサクッと倒せば何ともない、1ポイント分のスライムや虫に対し、あの【ハッスル・コイキングおじさん】や【都落ち二人組】のような地雷プレイヤーどもは、格下の雑魚相手に「俺の実力(パワー)を見ろ!」とばかりに自己顕示欲や下心を爆発させ、通路のど真んで無駄すぎる超高火力の大技(衝撃波)を全力で叩き込みやがる。

そのせいで、ただでさえ脆い雑魚モンスターの【ドロドロした体液や、バラバラになった肉片】が、大爆発の風圧によって通路の四方八方へと凄まじい勢いで爆散(スプラッシュ)し、ダンジョン全体がめちゃくちゃに汚染されるのだ。

さらに最悪なことに、そのぶち撒けられた汚物と床の土煙が絶妙な黄金比率でブレンドされ、『異臭を放つベタベタの泥沼属性衝撃波』となって周囲に撒き散らされる。

「普通にサクッと倒せよ『俺つえー』したいだけのアホども……! 威力(パワー)が無効化できても、この物理的な汚れと精神的異臭攻撃は防げねえんだよ……!」

【不屈の正義】を貫く俺の肉体ですら、このアホどもが人為的に作り出す汚物散布テロには毎回悲鳴を上げていた。


そして、そんな危険かつ不衛生極まりない環境だからこそ、臨時のシフト以外では、子供向けA級指導員のカズキ先輩が【未来の英雄である子供たちに付きっきりで指導(専属ガード)している】のだ。

放置すれば、コイキングおじさんたちが雑魚相手に「俺つえー」して無駄に爆散させた汚物衝撃波や、マダムたちの精神汚染のせいで子供たちが簡単に命を落としかねない、こんな『魔境ダンジョン』だからこそ、カズキ先輩という最高戦力が前線で防衛線を張る必要があったわけだ。

そう、あいつら(常連)さえいなければ、ここは本当にただの平和な公営ダンジョンなのだ。

先日、大雨の日に俺の真後ろに無音でワープしてきた【石像の爺さん冒険者(固定ペット)】。

あの不気味極まりない静止型モンスターの『悲しき真実』が、後日、タダシからの情報で判明した。

実はあの爺さん、ただの「究極の迷子」だったのだ。

格安だからとこの初級ダンジョンにやってきたはいいものの、あまりに素人すぎて、ダンジョン内でまず何をしていいのかが全く分からなかったらしい。

そこで爺さんは、近くにいた唯一のギルド管理者であるアイ先輩に、勇気を出して「あの、すみません、私はここで何をすれば……」と尋ねたそうだ。

それが、すべての悲劇の始まりだった。

その時のアイさんはカズキ先輩が不在だったため、本性を隠すのすらサボっている『完全なるクズモード』。

上級ギルドのロゴも持っていないシブい老冒険者(爺さん)の質問など、アイちゃんにとっては空気(ゴミ)以下。彼女は前髪をいじりながら、北極圏の流氷よりも冷たいデスアイを向け、言葉を交わす価値すらないと「完全無視(ネグレクト)」をぶちかました。公営の職員のくせに、完全なる職務怠慢である。

アイちゃんの絶対零度の拒絶魔法を真っ正面から喰らった爺さんは、あまりの恐怖に深刻なトラウマを植え付けられてしまった。

ギルド運営には二度と聞けない。かと言って、他の常連クランは関わったら社会的・肉体的に死ぬ。誰に聞いていいか全く分からなくなった爺さんは、完全に精神的に孤立してしまったのだ。

そんな中、爺さんの死んだ目に映ったのが、コイキングの衝撃波を淡々と無効化しながら、安全な右壁沿いを黙々と歩く、一番まともそうな常識人冒険者――すなわち、俺(レン)だった。

「あ、あのまともそうな若者に、ダンジョンの歩き方を聞きたい……!」

そう思った爺さんだったが、アイさんに喰らったデスアイのトラウマのせいで、恐怖で身体がガチガチに硬直。声をかける勇気が出ず、両手を突き出した『謎の戦いの構え』の形のままフリーズしてしまった。

そして、俺が背を向けて歩き出すたびに、声をかけようと必死に無音でにじり寄った結果――俺が振り返った瞬間には、すぐ真後ろで構えたまま固まっているという、あの恐怖の「ワープ型石像モンスター」が完成してしまった。

理由が切実すぎて泣けてきた俺は、後日、その爺さんに遭遇した際、意を決して自分から優しく声をかけてみることにした。

「お爺さん、あそこのスライムなら、こうやってペシッと叩けば簡単に潰れますよ。確実に経験値にもなりますから」

俺の拙い優しさから放たれた、ただの初心者向けのアドバイス。

だが、暗黒のネグレクト迷宮で遭難しかけていた爺さんにとって、それは神の救済に等しかったらしい。

「おおぉぉ……! 若者よ、ありがとう, ありがとう……!」と涙を流して感謝した爺さんだったが、ここからがまた別の意味での『魔境』の始まりだった。

説明してあげた結果。

爺さんは、俺の後ろを【ずっと付いてくる固定ペット(ストーカー老人)】へと完全クラスチェンジしてしまったのだ。

爺さんは、両手を突き出したあの最初の『謎の戦いの構え(完全フリーズ)』のポーズを寸分違わず完璧に維持したまま、無音で俺の真後ろをピタッと並走してくる。身体は1ミリも動かない。

――但し。口だけは、信じられないほどのハイパースピードで大爆走していた。

「いやぁ、若者よ。ワシが若かった頃のギルドはのぅ、もっと魔物の肉が美味くて……。そういえば今月のギルドの活動報告(予定)を見たかね? 来週は討伐報酬が2割引きになるらしいぞ。うむ、ワシらの今後の冒険方針としては、まずはあっちの通路の昆虫系をスライムみたいにペシッとベシッと殲滅して、確実に1ポイントずつ経験値を稼いで、それからだな――」

(……いや、ポーズは硬直した石像のくせに、勝手に俺とパーティー組んだ前提で『今後の人生の方針』までベラベラ語ってんじゃねえよ!!)

戦いの構えのまま、耳元で「昔話」と「ギルドの連絡事項」と「勝手な活動方針」をノンストップで囁き続けられる。

そんな俺たちの様子を、管理カウンターのアイちゃんが見下ろしていた。

「なんかゴミ箱(レン)の背後に、拡声器(爺さん)がバグでくっついててウケるんだけど。マジでギルドの景観損害罪でしょ、あのシワシワの雑魚どもまとめてゴミ箱にシュートしたいわ」

今日も安定の絶対零度のデスアイで、俺たちをゴミのように嘲笑してくるアイちゃん。

だが、通路の端では、別の狂気が身悶えしていた。

「ひゃんっ! アイちゃんがゴミ箱を見るような目でこっちを嘲笑してるぅ! レン殿ばっかりズルい! あの冷たい蔑みの視線を真っ正面から浴びるなんて、羨ましい、羨ましすぎるぞぉぉぉーーーッ!!」

公営の仕事をサボって新人と奥へふけていくアイさん(完全放置プレイ)に大歓喜していた【コイキングおじさん】だったが、俺がアイちゃんにゴミ扱いされているのを目撃したことで、さらに一段深いマゾの嫉妬へとダイブしていた。

(頼むからその席、今すぐお前と代わりたいよ、おじさん……)

ちなみに、タダシからの情報によると、この田舎ダンジョンには、実はさらに下の階層――通称【ガチ勢用・上級コース(下の階層)】が存在するらしい。

出るモンスターは上と同じ「簡単に潰れるスライムや虫」ばかりで強い魔物は1匹も出ないのだが、その代わりに【雑魚の出現数が、上の階層の比じゃないくらい異常なまでにギチギチに多い】のだ。ただただ冒険者のスタミナを極限まで削り殺すためだけに作られた、ギルド運営の『真のスタミナ消費地獄』。

(絶対に下には行かねえ……。あんなギチギチの密密ダンジョン、素人の俺が突っ込んだら、スライムの体液の津波に溺れて死ぬわ……)

世界は相変わらずバグっていてカオス。

だけど、俺は今日も、宿屋でキンキンに冷えた麦茶を飲まねばならないという虚無の使命感(ノルマ)だけを胸に、おじさんの羨望の眼差しをスルーし、背後にお爺さんの昔話を聞き流しながら、汚物土煙の舞う初級ダンジョンを一歩一歩進むのだった。

「――あー……、今日も平和だったなー(やせ我慢)」


(第7話・完


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。