↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鳥籠聖女は海を知りたい  作者: 篠原まど


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/26

07

 またすぐに来る、と約束して、レオンは帰っていった。小さな約束ひとつで、リーリエの心には常に灯りがともっているようだった。

 僅かな変化は、日常にも現れた。

 たとえば、祈りのとき。家族との別離の苦しみが永く癒えない謁見者とリーリエは向かい合っていた。今までならば話を聞いた後、「神の下に帰ることは、決して悲しいことではありません」と告げていただろう。けれど、目の前で泣く謁見者に、リーリエはどうしてもそう言えなかった。


「貴方の苦しみが、どうか安らぎますように」


 リーリエは説法の代わりにただ、手を組んで祈った。そんなリーリエをぽかんと見つめたあと、謁見者は戸惑いを漏らす。


「それだけですか? もっと、魂とかのお話をされるのかと思っていました」


「死者は神の下に居り、苦しみのない楽園で暮らしています。……けれど、貴方が苦しいのは、また別の事実のように思って……」


 リーリエは一度、目を閉じた。自らの言葉を頭でもう一度整理しながら話す。


「神の教えは、この世の絶対の真理です。貴方の大切な方は、安らかに過ごされています」


「けれど、それで貴方が寂しくなくなるわけでは、無いでしょう?」


 リーリエは静かに告げると、目を開く。謁見者は、目を見開いてリーリエを見つめていた。その瞳に、じわりと涙の膜が張る。


「……っ、はい。寂しいです……、寂しくて、たまらない。会いたい、安らかでいて欲しいけど、なにより、会いたくて仕方ないんです……っ!」


 リーリエは、そっと彼女の肩に手を添えた。


「それで、いいのです。寂しい気持ちを、無理に抑えなくていい。……貴方の悲しみに寄り添うために、私はいるのです」


泣き崩れた謁見者の背を、リーリエは時間いっぱいまで摩り続けていた。


 謁見終わりは、今までにない疲労感とどこか充足感のようなものがあった。とはいえ、その後もいつも通り予定は詰まっている。聖書を朗読し、人々のために祈り、そして食堂で夕餉を取った。


 全てが終わる頃には、日はすっかり暮れていた。簡易的な衣服に着替えると、リーリエはそのままベッドに沈んだ。


 頭に浮かぶのは、昼間のことだ。謁見の終わり、彼女は何度もリーリエの手を握り、「ありがとう」と言っていた。聖女になってから、何度も聞いた言葉なのに、耳の奥にその声がこだましている。

 リーリエは瞼を閉じて、彼女の安寧を願って手を合わせる。


 そのまま意識が落ちようとした時、コンコンコン、と扉が鳴った。


「リーリエ。少し、話があるんだが、いいかな」


 セドリックの声だった。しかし、どこかその声は固い。リーリエは体を起こし、扉を開けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。