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「お兄さまも、本当は分かっているのでしょう。それは優しさとは言えないと」
ラリアはセドリックの傍にしゃがんで、彼の頬に手を添えた。セドリックの瞳が、ラリアを捉えて戸惑いで揺れた。
「私、甘いものが好きです。可愛いものも。食べると幸せな気持ちになるし、可愛いものは、見ているだけで心が踊るの。全部、レオン様と二人で見つけたんです」
「…………」
「今、心が痛いです。お兄さまに裏切られていたと知って、信じていたものが崩れて、体ごとバラバラになりそう。だけど、それでも、知らなければよかったなんて思えない」
セドリックの唇が震えた。ラリアが、優しくセドリックの頬を撫でる。
「だって、知らなかったら、ずっとお兄さまは一人で苦しんでいたでしょう」
セドリックが目を見開き、レオンも思わずと言ったようにラリアに向かって一歩踏み出した。ラリアは、小さく微笑んだ。
「お兄さまが、昔私に言ってくれた言葉、してくれたこと。あの日謝って泣いた理由。全部分からないままだった。そんなのは嫌です。分からないまま過ごして、お兄さまがお兄さま自身を騙し続けるのも知らないなんて」
「君は、何を言ってるんだ……」
セドリックが唖然として呟いた。ラリアを見つめる目に、怯えが交じる。
「あの日、お兄さまと一緒に泣けたら良かったのに。神官長様に、そんなのはおかしいです、って言えばよかった」
ラリアは一度目を伏せた。けれど"リーリエ"だったラリアにはそれは出来なかった。
「……ごめんなさい、お兄さま。沢山くれようとしたのに、気づけなくて。ずっと助けてくれたのに、私はあなたの苦しみに気づけなかった。……でも」
セドリックの頬が強ばるのを感じて、ラリアは再び親指をそっと動かした。
「もういいのよ。お兄さま。もう、私は貴方に守られるだけの子供じゃない。だから、一人で抱えなくていいのです」
セドリックは、目の前の少女を見上げていた。閉じ込め、守り、縛り続けてきたはずのその姿が、今この瞬間だけは、幼き日に信じていた”聖女”そのものに見えた。
「……リーリエ」
ぼろぼろと、セドリックの何かが崩れていく。それと同時に、瞳から涙が溢れ出していた。
「あぁ、……リーリエ、ごめんね。ごめんよ……僕は、ずっと、君に酷いことをしてきた……ずっとだ」
「いいのよ、お兄さま……。大丈夫よ」
ラリアはそっと、セドリックを抱きしめた。子供のように泣くセドリックの背を、しばらく撫で続けた。




