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「そういえば」
レオンがふと、表情を緩めた。難しい話は終わりというようだった。暫くお喋りを楽しむつもりらしい。
「リーリエってさ。あの魔王を倒した聖女サマと同じ名前だよな。確かあの人もリーリエって習った気がする」
「ええ、そうですね。……正確には、聖女は皆そうです」
リーリエは首肯した。レオンが、気の抜けた声を上げる。
「えっ?」
「歴代の聖女はみなリーリエという名を戴きます。魔王を倒したのは、三十一代の聖女様。私は、第七十五代聖女リーリエです」
レオンが今度こそ完全に沈黙した。
「レオン様、どうされました? ご気分が悪いですか」
リーリエは慌ててレオンの顔を覗きこもうと近づいた。体を寄せたリーリエの手を、がしりとレオンが掴む。
「……聖女になる、前は?」
どこか、祈るような声だった。なぜ、レオンがこんな顔をしているのか分からない。
「私は、生まれた時に聖女に選ばれたのです。ですから、生まれた時からリーリエです」
リーリエの腕を掴むレオンの力が緩んだ。不思議そうに首を傾げたリーリエをよそに、ぶつぶつと呟く。
「……そっか。そうだったんだ。だから、好きなものも、分からないと……。アンタは……」
レオンは両手で顔を覆って呻いた後、顔を上げた。拳を強く膝の上で握り締め、リーリエの瞳をじっと見る。唇が何度か震えた。何かを言おうとしてはやめるを繰り返して、口を開いた。
「……なあ、渾名。考えてもいい? リーリエじゃなくて、アンタだけの」
「渾名……ですか?」
「ああ、とっておきのやつ考えるから」
呼び方が変わることに、なんの変化があるのだろうか。正直なところ、リーリエはリーリエと呼ばれても満足している。だが、レオンが真剣に言うから、頷いた。
「分かりました、レオン様がそういうなら……楽しみにしています」




