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カミニイタルモノガタリ  作者: Saga
神の残滓編 前編
25/28

第25話 王ご乱心?

 ルアスのワープというのは案外特別な感覚がない。


 湖でのワープの、引っ張られるような、ぶん回されるような感覚を考えると、やはり彼女の空間操作の腕がいいということなのだろう。


 そのことと、似たような景色の平原にワープしたこともあって、一瞬サガはちゃんとワープしたのか疑った。


「はいとうちゃーく」


 一仕事終えたような感慨やらが全くなさそうな、あっさりした声で到着を告げる。


「毎度のことながらスッと行くよな、お前のワープは。ワープ特有の感覚が薄い」


「平原ですけど、周囲に村とかは…」


 辺りを見回すと、後方に道を発見した。


 道を目で辿ると、少し先に村っぽいものがあった。


「あ、あそこ。村じゃないですか?」


「え~遠いんですけど~。サガちゃんおぶって~」


「ローグさんに頼んでください」


「臭い」


「ひどい」


 軽い返事の割にマトモにダメージを受けてそうな顔のローグを尻目に、サガはすたこら歩き出した。




 村は遠目に見ていたよりも結構大きく、入り口には門番が二人立っていた。


「まあ、やっぱり門番居ますね。どうします?」


「どうって…ここはテンプレ的に、しがない旅人だ、でどうよ」


「思えば今の私たちって住所不定無職だよねー」


「いや、まあ、そうですけど…あ、またお金を稼がないと宿が」


「まあ、別に野宿でもいいだろ」


「贅沢は言ってらんないかぁ」


 そんなことを話しつつ、一歩一歩村の入り口に進んでいく。


「失礼、旅のお方ですか?」


 片方の門番が、一歩前に出て声をかけてくる。


「ええ、そうです」


「目的地などは?」


「道なりに、気ままに旅をしています」


「そうですか。でしたら、村を発つときは東の道から。北は王都のある方面ですが、今は王都には近づかない方がよろしい」


「王都に?どうして?」


 ルアスがローグの後ろからひょっこり飛び出し、門番に質問する。


「ああ、まだ聞いていませんか。つい先日、王が乱心して、自分で城を爆破した後に暴政を始めたらしいんです。王都の周辺から次々と、様々なものが強奪されているそうで」


「ちょ、ちょ、ちょっと待って下さい?王が乱心で?強奪と?城を爆破って言いました?」


「えぇ…自分で城を爆破、その後瓦礫の山に玉座を置いて座ったと、届いた報告には…」


「…随分と、ワイルドというか、破天荒な王さまだな」


「まあそういう訳なので、王都からはしばらく反対方向に進んだ方が良いと思いますよ。この村ももう、いつその魔の手が来るか…」


「そうですか…忠告、ありがとうございます」


「えぇ。ではどうぞ、どうかゆっくりお過ごし下さい」


 門番が道を開けてくれたので、村の中へ歩を進める。


 少し歩いてみたが、まあなんてことのない、緑の多い豊かな村だった。


「王が乱心したとのことですけど、もしかして残滓の影響ですかね」


「まあ、あり得る話ではある。ただ、残滓と関係なかったら面倒事に巻き込まれることになる」


「漏れた魔力が、もう結構広がってきちゃってるのよねー。大まかな位置なら探りやすくなっていってるんだけど、逆に細かい位置ってのは探知しにくくなっていってるのよねー」


「これからも残滓がある世界を見つけたら、その後は自分らの足で残滓を探す必要があるワケだ」


「…すいません、ちょっと静かに」


「ん?」


 急にサガが耳を澄ましだした。


 ローグとルアスも静かにすると、遠くから喧騒のようなものが聞こえてきた。


 方角的には、村の北側のようだ。


「…向こうが騒がしいな」


「行ってみる?」


「…何か事件かもしれません。見るだけ見に行ってみましょう」


 声のする方向、北の門から少し逸れた村の一角に、何やら人だかりが出来ていた。


 その先からは、上手く聞き取れないが、怒号のようなものが飛び交っている。


 人と人の隙間から何とか先を覗くと、身なりの良い一人の男性が、村人たちに囲まれ、困り果てた表情をしていた。


 何か問い詰められているようで、飛び交う様々な声の合間に何か喋ろうとするのだが、それすらすぐに遮られてしまっている。


「何とか言えよ!さっきから何か喋ったと思ったらわからないだの何だのよぉ!あんま舐めてんじゃねぇぞ!」


「あっ!」


 一人の村人が発した一際大きい怒号に続いて、その村人が手に持っていた小さい木のバケツを、男の頭に投げつけた。


 サガが慌てて足を踏み出したが、驚いて後退した村人たちに跳ね返されてしまう。


 ちょうど留め具の部分が当たったのか、男は頭を抑えて、苦しそうにうずくまってしまった。


 村人たちもそれを見て、流石に動揺してどよめいている。


「退いた退いた!道開けろ!」


 ここぞとばかりにローグが人だかりに割り込んでいき、サガとルアスも後ろに張り付いて続く。


「大丈夫ですか?怪我は?」


「…っ、何とも、ありません…」


 そうは言うが、額を押さえる手の隙間からは血が見えた。


「サガ、ルアス、手当てしてやれ。おいお前ら、これは一体どういう状況だ!」


 突如現れた巨漢に、村人たちは困惑しているのか、畏縮しているのか、誰も返事を返さなかった。


「そこのお前!」


「な、なんだてめぇ!この村の人間じゃねぇだろ!」


 さっきバケツを投げた男を指名する。


「そうだ、ただの旅人だ!文句あるか!」


「…俺らの問題だ!部外者が割って入るんじゃねぇ!」


「人が傷つけられてんだ、割って入るとか言う問題じゃねぇだろ!大体なんでこんなことになってる!事情を言え事情を!」


 威圧感をここぞとばかりに発揮して、相手を畏縮させている。


 バケツを投げた村人も負けじと声を張るが、勢いは弱まってきている。


「…ソイツは王サマの城の人間だ。お前ももう聞いてるだろ、王サマが略奪を始めたってよ。この村からも物を奪おうってんだ。その先駆けに来たんだろ!なぁ!律儀に税を納めてたら足元見やがって!お高くとまってるヤツらはよ!こうなっても当然だ!」


「ガペルさん!」


 バケツを投げた村人───ガペルの横の婦人が、再びヒートアップしてきた彼を小声で諌める。


「…そうなのか?」


 口論の裏で簡単な治療を受けた男は、ゆっくりと、しかし強かな声色で話し出す。


「私(わたくし)は…違います。この村にもまもなく徴収が行われるのは確かですが、私はその忠告を…今の王は明らかに狂っておられる。あのお方は、民を何よりも尊ぶお人でございます。きっと何か、原因があるはずなんです…そうだ、あの曰く付きの宝石…」


 最後の一文で、サガたち三人の顔つきが変わる。


 三人はサッと目配せをして、ローグが再び村人たちに話しかける。


「一旦俺らがコイツと、そっちの事情を両方聴く。話の続きはその後だ。良いな?」


「…チッ!」


 ガペルは話を聞くといっているのに、舌打ちをして去ってしまった。


「…サガ、コイツの方頼めるか。俺とルアスは村人たちの話を聞く」


「わかりました。立てますか?えぇと…」


「ブランでございます。アーノルド・ブランです。先程は、見ず知らずの私に、ありがとうございます。謝礼は必ず」


「いえ、俺たちも一つ気になることがあったので。取りあえず向こうへ。話を聞かせてください」

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