表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/17

第15話 再会はミートパイと共に

 朝食を済ませた後、ローグも連れて日雇いの仕事に向かったサガ。


 いつもどおり夕方ごろに仕事を終えると、二人は夕食に酒場へ向かった。


 酒場は今日も盛況で、早くもカウンター席は埋まっていたので、空いていた四人席のテーブルに座った。


「ここ、夜の間限定で店主の奥さんのミートパイが食べられるんですよ。ローグさんも是非」


「へぇ、そりゃ魅力的だな。ところで酒は───」


「我慢してください」


 最後まで言う前に止められ、露骨にしょんぼりした顔になる。


 注文を取りに来た店主の妻に、ミートパイ四切れ、腸詰め肉二本、豆のスープ二つを頼み、届くのを待つ。


 待っている最中、店の扉が開いたので、なんとなくそちらに目をやる。


 すると入ってきたのは、見覚えのある探検家と巫女───クラックとセリだった。


 他よりも目立つ姿なので、店内の注目を集め、セリは若干落ち着かない様子でいる。

 

 二人は店内を見渡し、サガとローグの姿を発見すると、手を振りながら近寄っていく。


「どうも、サガさん、ローグさん」


「昨日ぶり、です」


「クラックさん、セリさん!昨日の今日で来てくれるなんて」


 サガは立ち上がって二人を歓迎しつつ、空いている二席に着席を勧めた。


「僕らが取ってる宿屋と役場は、こことは逆の方だからさ。運良く早めに諸々が終わって、自由時間になったから来れたんだ」


「諸々って、俺が───」


「ローグさん、声落として」


 デフォルトが大きめのローグの声は、騒がしいこの酒場の中でもかなり響くので、サガが声量を落とすようローグに注意する。


「おっと、そうだな…で、俺が引き起こしてた現象の報告とかを?」


「はい。すごく詳細に尋ねられたんですけど、クラックさんが上手いこと嘘でやり過ごしてくれて…」


 そこで、サガとローグの注文の品を店主の妻が運んできた。


 ミートパイの香ばしい香りが一同の鼻腔をくすぐると、クラックとセリのお腹から、グゥ~と音がなり、二人は少し恥ずかしげに目を逸らした。


「そう言えば夕食、まだなんだ。ここで食べようかな」


 セリもこくりと頷いたので、サガが追加の注文を入れる。


「すいません、同じものを、この二人にも」


「あとエールを一杯!」


「あ、ちょっと!」


 ローグの注文を取り消そうとするが、その前に店主の妻は去ってしまった。


「…ローグさん」


「隙を見せた方が悪いのさ」


 ジトー、っとした目で見つめるサガに、ローグがドヤ顔で返す。


 その様子をクラックは仄かに微笑んで、セリは苦笑するように眺めていた。


 やがて二人の分の料理と、ローグの酒も届き、一同は食事を始める。


『いただきます』


 クラックを除く三人は、そう言ってから食べ始める。


「二人の出身の世界にも、食前、食後の言葉の文化があるのか」


 豆のスープを食べながらそう聞いてくるクラックに、サガは訝しげな顔になる。


「ここでは、そう言うのは東方…セリさんの出身の地域で主に信仰されている宗教の文化なんだ」


「この巫女と言う役職とか、神社とか、あの時使った御札とかも、全部伝統のものなんです」


「そうなのか。でも、俺がああしてるのは別に、そう言う文化の中で育ったとかじゃなくて、育てて貰った人からそうするよう教わってきたから、そうしてるんだ。俺たちは命を頂いて生きているから、毎食それに感謝をするべきなんだ、って」


 二年と少し前までの、原点とはまた別の世界での日々を思い返しつつ、サガはそう返した。


「俺は、ある時その文化に出会って、その精神に感銘を受けたから、ってところかね」


 エールを呷りつつ、ローグはそう言う。


「そうだったのか。僕は北の出身だし、そもそも無宗教だからね…と、雑談も良いけど、伝えたいことがあったんだった」


「あ、そうでした」


「伝えたいこと?」


 サガはミートパイに伸ばしていた手を止め、二人の方を見る。


「役場の中で、ある部屋の前を通りすぎたときに、うっすら聞こえてきたんです。ここから北西にある湖の辺りで、変なことが起きている、みたいな内容のことが」


「それは…」


「もしかするかもな」


「二日後には僕らも解放されてる筈だから、また訪ねるよ。そしたら、一緒にそこへ行ってみよう」


「うん。ありがとう、二人とも」


「お礼なんてとても…私なんて、これからお世話になる身ですから…いえ、精一杯、お世話にならないようには頑張ります!」


「そんなに張り切らなくても良いんだよ!ちょっと友達とキャンプでもするくらいの心持ちで良いんだ」


「それは…流石に良くないのでは」


 四人の慎ましやかな、一つは豪快な笑い声が、夜の酒場の一角で響いた。


 それから二日後の昼、サガのローグは宿を出て、町の反対側まで来ていた。


 今度はクラックとセリの居る宿まで、二人の方が来ているのだ。


 教えて貰った宿の場所まで向かうと、入り口の前で二人が出迎えてくれていた。


「お二人とも、ご足労を」


 セリが駆け寄ってきて、ペコリと頭を下げる。


「一昨日ぶりだね。無事諸々の手続きも終わって、僕ら二人も自由の身…じゃないんだよね、これが」


「え?」


 ゆったりとその後を歩いてきたクラックは、やれやれと言った顔でそう言った。


「また別の依頼を出されてしまってね。曰く…」


 勿体付けるように、一呼吸置いてから、続きを話す。


「北西の湖の、()()()()()()()()()()()()()()()()()()…これを調査へよ、とね」


「別の場所に…!」


「飛ばされるとは…!」


 サガとローグの顔が、驚きと期待で染め上がる。


「はい。私も多分、お探しの方かと思います」


「っしゃあ!ツイてるぜ俺ら!そしたら行くっきゃねえな、その湖とやら!」


「各々準備を整えて、明日の早朝、出発しよう!」


「おう!」


「ああ!」


「はい!」


 三人の返事が、重なって響いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ