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追放された悪役令嬢、赤字辺境領を押し付けられたので帳簿から立て直します  作者: 水城ルナ


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第25話 連携は、楽にならない

 連携は、始まった瞬間に問題を生む。


「……税が、二重に記録されています」


 マルクスの声は、落ち着いていた。

 だが、その内容は穏やかではない。


「どこで?」


「境界の三村です。ローゼン領と、こちらの双方で」


 私は、帳簿を並べた。


 レインヴァルト領の記録。

 ローゼン領の写し。


 どちらも、嘘は書いていない。

 だからこそ、重なった。


「想定内ね」


 私は、ペンを取る。


「責任の所在が、曖昧だからです」


 連携とは、境界を溶かすことではない。

 むしろ――境界を、正確に引き直す作業だ。


 昼前、ハインリヒから書簡が届いた。


『こちらでは正規の徴税を行っている』

『貴領が譲歩すべきではないか』


 私は、短く返した。


『双方が正規です。だから調整が必要です』


 数刻後、使者が来る。


「伯爵は、苛立っています」


「でしょうね」


 私は、帳簿を閉じない。


「数字が、思ったより言うことを聞かない」


 午後、境界村の代表を集めた。


 村人たちは、落ち着かない様子で座っている。


「今まで、どちらに納めていましたか」


 沈黙。


 やがて、一人が答える。


「……年によって、です」


 それが、現実だった。


「では、これからは」


 私は、板に線を引いた。


「村単位で、納付先を固定します」


 どよめき。


「収穫量に応じて、年ごとに調整します」


「不利になる村もあります」


「ええ」


 私は、否定しない。


「でも、分かります」


 それが、重要だ。


 夕方、ミーナが言った。


「……連携すれば、楽になると思っていました」


「楽にはなりません」


 私は、即答した。


「責任が増えるだけです」


 その夜、ハインリヒが直接来た。


「面倒な提案だ」


「承知しています」


「だが、理屈は通っている」


 彼は、帳簿を睨む。


「……こちらの取り分が、減る」


「その代わり、揉めません」


 沈黙。


「どちらを選びますか」


 彼は、しばらく考えた。


「……減らす」


 短い答え。


「揉める方が、高くつく」


 それが、彼なりの結論だった。


 夜、帳簿をまとめる。


 数字は、増えていない。

 むしろ、少し減った。


 だが――


「……争いの欄が、減りましたね」


 マルクスが言った。


「ええ」


 私は、頷く。


 連携は、利益を増やさない。

 ただ――


 **無駄な摩擦を減らす。**


 それだけで、十分な成果だった。


 調整役とは、得をしない立場だ。

 感謝もされにくい。


 それでも。


 この領地は、

 今日も壊れずに済んだ。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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