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追放された悪役令嬢、赤字辺境領を押し付けられたので帳簿から立て直します  作者: 水城ルナ


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第23話 説明を求められる人

 説明してほしい。


 その言葉が、これほど重くなるとは思わなかった。


「一度、整理して話していただけませんか」


 王都から来た文官が、丁寧にそう言った。


 場所は、レインヴァルト領の会議室。

 集まっているのは、近隣領の役人と、地方官僚数名。


 全員が、こちらを見ている。


「……何についてでしょう」


 私は、即答しなかった。


「レインヴァルト式、についてです」


 やはり来た。


「なぜ、破綻しなかったのか」

「何を、他領でも再現できるのか」


 言葉は穏やかだが、視線は鋭い。


 ミーナが、端の席で身を縮めている。


「まず、前提を確認します」


 私は、板を立てた。


「この領地は、成功していません」


 ざわめき。


「黒字ではありません」

「余裕もありません」


 私は、数字を書き出す。


「それでも、生き残りました」


 沈黙。


「理由は、三つあります」


 一つ目の線を引く。


「嘘をやめた」


 二つ目。


「人を切らなかった」


 三つ目。


「時間を稼いだ」


 文官の一人が、眉をひそめる。


「……それは、手法ではありません」


「ええ」


 私は、頷いた。


「態度です」


 会場が、少しざわつく。


「制度を真似すれば、同じ結果になると思われています」


 私は、板を指で叩いた。


「なりません」


 はっきり言った。


「準備、説明、合意、後始末」


 四つの言葉を書く。


「これを省いた改革は、必ず人を壊します」


 誰かが、メモを取る音がした。


「では、何を学ぶべきか」


 別の文官が問う。


 私は、少し考えてから答えた。


「失敗の仕方です」


 空気が止まる。


「壊れない失敗の仕方」


 それが、この領地のやり方だ。


 沈黙の後、質問が飛ぶ。


「王都が支援すれば、もっと早く――」


「必要ありません」


 私は、遮った。


「支援は、責任を曖昧にします」


 ミーナが、驚いた顔でこちらを見る。


「この領地は、遅くて、面倒で、不格好です」


 私は、正直に言った。


「でも、逃げ道がありません」


 それが、唯一の強みだ。


 会議が終わる頃、全員が納得した顔ではなかった。


 それでいい。


 理解される必要はない。


 帰り際、ミーナが小さく言った。


「……全部、答えませんでしたね」


「ええ」


 私は、頷く。


「答えを渡すと、考えなくなる」


 その夜、帳簿を閉じながら思う。


 私は、改革者ではない。

 教師でもない。


 ただ――


 **説明を求められる立場**になってしまった。


 それは、望んだ役割ではない。


 だが、避けても通れない場所だった。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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