第22話 後始末という仕事
謝罪は、改革よりも重かった。
カールシュタット村の集会所は、朝から重苦しい空気に包まれていた。
人は集まっているが、視線は冷たい。
壇上に立つのは、村長と――ミーナだった。
彼女の手は、わずかに震えている。
「……今回の改革は、急ぎすぎました」
声は、はっきりしている。
逃げてはいない。
「準備不足でした。説明も、対話も足りていませんでした」
村人たちが、ざわつく。
「今さら言われてもな!」
「生活が止まったんだぞ!」
ミーナは、深く頭を下げた。
「申し訳ありません」
それだけだ。
言い訳はない。
私は、後ろから様子を見ていた。
前に出ない。
ここは、彼女の仕事だ。
やがて、一人の農民が口を開いた。
「……元に戻るのか」
ミーナは、首を横に振った。
「全部ではありません」
村人の顔が、険しくなる。
「でも、急に変えた部分は、撤回します」
板を示す。
「納付期限。猶予申請の方法。罰則の即時適用」
ざわめきが、少し和らぐ。
「その代わり」
ミーナは、続けた。
「村ごとに、話し合いの場を設けます」
それは、時間のかかるやり方だ。
「数字は、逃げません」
彼女は、はっきり言った。
「でも、人は逃げます」
その言葉に、空気が変わった。
完全な納得ではない。
だが、爆発はしなかった。
集会の後、ミーナは力尽きたように椅子に座り込んだ。
「……向いていないのかもしれません」
「いいえ」
私は、即座に否定した。
「向いていないのは、“急ぐ改革”よ」
彼女は、顔を上げる。
「正しさは、道具です」
私は、静かに言った。
「使い方を間違えると、人を傷つける」
彼女は、ゆっくり頷いた。
帰路、ミーナが小さく言った。
「……レインヴァルト式って、何なんでしょう」
私は、少し考えた。
「名前を付けるなら」
そして、答える。
「後始末を、最後までやること」
その夜、エルナが報告に来た。
「噂、少し変わったわ」
「どう?」
「“冷たい”から、“面倒くさい”に」
私は、わずかに笑った。
「進歩ね」
帳簿を開く。
数字は、今日も劇的には動かない。
だが――
壊れた場所は、少しずつ塞がれていく。
改革は、導入よりも後始末が難しい。
そして、それを引き受ける人間は少ない。
だからこそ――
この仕事は、
**避けられない役割**になっていく。
本話もお読みいただき、ありがとうございました!
少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、
ブックマーク や 評価 をお願いします。
応援が励みになります!
これからもどうぞよろしくお願いします!




