表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された悪役令嬢、赤字辺境領を押し付けられたので帳簿から立て直します  作者: 水城ルナ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/39

第18話 生き残った領地

 処分保留の通知が届いたのは、静かな朝だった。


 王都の封蝋が押された書簡は、薄く、重くもない。

 だが――内容は、この一ヶ月のすべてを肯定していた。


「……当面、現行体制を維持する、ですか」


 マルクスが、何度か読み返しながら言う。


「ええ」


 私は、短く頷いた。


 支援もない。

 称賛もない。

 だが、切り捨てられもしなかった。


 それで十分だ。


 昼、城下町を歩く。


 市場は以前より賑やかではない。

 だが、閉じてもいない。


 店主が、こちらに気づいて軽く頭を下げた。

 以前のような敵意も、期待もない。


 ただの――日常だ。


「……静かですね」


 マルクスが言った。


「ええ」


 私は、空を見上げる。


「でも、これがいい」


 ヨハンが、畑の方から歩いてきた。


「村の会合、終わった」


「どうでした?」


「……出ていく話は、なくなった」


 それは、最大の成果だった。


 エルナは、夕方に顔を出した。


「王都、すぐには動かないわ」


「そう」


「でも、見てる」


 私は、否定しなかった。


「商人は?」


「慎重。けど……」


 彼女は、肩をすくめる。


「この領地、死なないって分かった」


 それだけで、十分だ。


 夜、執務室で帳簿を閉じる。


 赤は、まだ残っている。

 だが、増えてはいない。


「……黒字じゃないですね」


 マルクスが、苦笑した。


「ええ」


 私は、正直に答える。


「でも、生きている」


 それが、全てだ。


 帳簿を棚に戻す。


 この一ヶ月で、奇跡は起きなかった。

 英雄にもなっていない。


 だが――


 誰も、去らなかった。

 誰も、潰れなかった。


 それは、数字よりも確かな結果だ。


「……続けますか」


 マルクスが、静かに聞いた。


「ええ」


 私は、迷わず答えた。


「ここからが、本番よ」


 改革は終わっていない。

 むしろ、始まったばかりだ。


 勝たなくてもいい。

 褒められなくてもいい。


 この領地が、今日を生き、明日を迎えられるなら。


 それで――十分だ。


 追放された悪役令嬢は、

 赤字の辺境領で、今日も帳簿を開く。


 静かに。

 確実に。


 ――生き残るために。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ