停電の数分間
機器の切り替え作業から数日後、建物の一部で短い停電が起きた。トラッバの監視室は予備電源で稼働を続けたものの、周辺の通信装置が復旧するまで数分のずれが生じた。小田切は最初に顧客への影響を確認し、久世は設備の復旧状況を見た。予備電源が働いた事実だけで、問題が無かったとは言えない。
飯塚は当番の人員を増やしすぎず、通常の業務を維持できる組み合わせを選んだ。全員が一つの事象へ集まれば、別の監視がおろそかになる。銀利は建物の管理会社へ設備状況を確認し、停電した範囲と時間を記録させた。原因を勝手に決めることはしなかった。
良助は復旧後の通知一覧を見て「時間が空いたところはどう調べるんですか」と尋ねた。野江は装置の側に残る記録と受信側の記録を突き合わせる方法を教えた。ただし失われた情報があれば復元できるとは限らない。比較できた範囲と残る不明点は、分けて報告する。
午後、顧客の一社から問い合わせがあった。設備は止まっていないか、情報が抜けていないか。尾高は確認済みの事項と調査中の事項を整理して説明した。顧客側も別の業務を抱えており、何度も問い合わせる余裕はない。次の連絡予定を明確にして電話を切った。 停電が終わった後、ビルの管理会社から設備点検の日程が送られた。久世は今後の作業へ影響が出ないか調べ、予定表に書き加えた。机の隅に置いた懐中電灯の電池も点検した。
日が暮れる頃、建物の廊下にはいつもの照明が戻った。久世は予備電源の動作記録を保存し、交換が必要な部品の有無を点検項目へ入れた。数分の停電で会社の運用がすべて止まらなかったのは、前もって準備した人がいたからだった。




