切り替えの順序
久世匠は朝から設備の切り替え手順を読み返していた。長く使っていた監視用の集約サーバーを更新する計画で、作業は一度に行わず顧客群を分けて進める。止まった時に元へ戻せるよう、変更前の構成を保存してある。だが現場からは「まとめて終わらせたほうが早い」という声も出ていた。
銀利は工数の見積もりを比べたうえで、段階的な切り替えを選んだ。失敗した時の影響が違う。小田切は夜間の監視に空白ができないよう当番表を調整し、野江は旧環境との照合方法を準備した。安全に仕事を進めるには、実作業以外の時間も必要だった。
良助は二つの計画を並べて「新しいほうが全部動いても、古いほうをすぐ止めないんですね」と聞いた。久世は重複監視の期間を設ける理由を説明した。機器が動くことと、必要な通知が正しく届くことは違う。見落としがないか、しばらく比較してから旧環境を止める。
切り替え初日、試験対象の一部で通知の順番が逆転した。記録の取り込みが数分遅れていたためだ。久世は予定どおり作業を一時停止し、野江と原因を調べた。顧客へ影響を説明すると、先方は次の作業予定を改めて確認してくれた。 作業を二段階に分けたことで、切り替え担当者が休める時間も確保できた。以前は一晩で全件を終える計画を立てがちだったが、翌朝の確認までを含めれば危うかった。久世は試験用の時計をリセットし、次の作業日まで封印した。
夕方、久世は変更記録に「予定より遅れ」と書いた。急いで隠すような失敗ではない。最初の段階で見つかったからこそ、残る顧客に同じ問題を広げずに済んだ。机の上には次の作業表が残っていたが、今日は封筒へしまい、電源を落とした。




