保険会社の質問
ある取引先から、情報漏えい保険の更新に必要な質問票への協力を求められた。保険会社は事故の備えとして、アクセス管理、バックアップ、教育、外部委託の状況を確かめたいという。日下部は回答できる範囲を整理した。顧客自身が管理する設備まで、トラッバが代理で保証することはできない。
真壁は保険会社へ直接説明すれば早いのではと考えたが、契約上の窓口は顧客だった。銀利は情報の共有について正式な同意を取るよう指示した。保険のためとはいえ、監視情報を無制限に渡してよいわけではない。必要な項目だけを、顧客の判断で提出する。
良助は質問票を読み、「『実施している』は、いつからですか」と尋ねた。昨月から導入した手順も、数年前から運用してきた手順も同じ丸印になる。日下部は運用開始日と確認資料を別欄に付け加えた。対策を持っていることと、確実に使えていることを区別するためだった。
顧客側では、総務の担当者が保険代理店へ質問を送っていた。難しい言葉が多く、情報部門へ何度も確認しなければならない。尾高は相手の仕事を増やしてしまうことを気にしたが、誤った答えが残るほうが後で困る。やり取りは数日にわたって続いた。 質問票には社内教育の実施回数を尋ねる欄もあった。形式だけの出席簿では意味が薄いと考え、日下部は実施日と内容を確認できる範囲でまとめた。
提出が終わっても、保険の条件はすぐには決まらなかった。日下部は質問票の控えを保管し、社内の改善項目に参照先を付けた。他社からの問いが、自分たちの約束の曖昧な場所を照らすこともある。机の上の紙は、次の点検にも使える資料になった。




