遅れて届く警告
小田切は監視システムの試験で、意図的に通知の配送を遅らせる設定を使った。通常ならすぐ担当に届く警報も、外部の通信経路に問題が起きれば数分遅れることがある。訓練環境の画面には、発生した時刻と受信した時刻が別々に表示された。そこまでは予想どおりだった。
ところが、広瀬が作った集計表では遅延がゼロになっていた。表示に使う時刻を取り違えていたのだ。小田切はすぐに数字を直さず、どの項目から集計したかを確認した。急いで修正すれば現場の試験は終わるが、別の報告書でも同じ間違いを繰り返すかもしれない。
良助は集計表の見出しを眺め、「『通知時刻』が二つありますね」と言った。受信時刻と発生時刻が同じ名前で表示されていた。野江は名称を変え、式の参照先も修正した。良助には難しい計算を任せていない。ただ、同じ言葉が違う意味で使われていることにはすぐ気づいた。
飯塚は試験を続け、遅延が起きた時の連絡優先順位を検討した。警報が遅れたら全件を緊急扱いにすれば、重要なものがかえって埋もれる。原因を確認し、影響する顧客を把握してから通知する必要がある。銀利は試験結果を受けて、外部への説明方法の見直しを指示した。 作業に立ち会った広瀬は、遅れて届いた通知の並びが実際の発生順と違うことにも気づいた。読んだ順に対応すると、時間の前後関係を誤る危険がある。小田切は画面の並べ替え条件を確認し、引き継ぎ欄へ書き添えた。
終業前、小田切は訓練環境を元の設定へ戻した。変更記録には成功した結果だけでなく、最初にゼロと出た原因も残した。間違いを見つけた日だからこそ、次の人が同じ場所で迷わないようにしたかった。




