役所の小さな相談
市の外郭団体で情報管理を担当する中川は、昼休みにトラッバセキュリティへ電話を掛けた。職員の人数は多くないのに、扱う相談記録は増えている。年度内に見直すべきことを知りたくて、公開されている会社案内を見つけたのだという。尾高は問い合わせを受け、相談の範囲を丁寧に聞いた。
中川の職場では、外部の専門家へ頼む予算がまだ確保されていなかった。すぐに契約を結びたいわけではない。真壁は営業の機会だと理解しつつ、無料の相談で引き受けられる範囲を銀利へ確認した。銀利は一般的な対策の考え方と、依頼時に必要な資料を案内することにした。個別システムの安全性を無償で保証することはできない。
良助は中川へ送る資料の表記を整えていた。専門用語に補足を付けると、真壁が「少し長すぎるかな」と言う。青年は「初めて読む人なら、どこを先に見ますか」と尋ねた。二人は目次を作り、最初のページに相談窓口を置いた。説明を増やすより、読む順番を示したほうが役に立つ場合もある。
中川は届いた資料を印刷し、部署の机へ回した。翌日、同僚から「パスワードの管理だけでも相談できるのか」と質問された。中川は資料に書かれた範囲を説明し、具体的な調査が必要なら正式な予算と手続きが要ると答えた。 中川は相談先の資料を受け取ると、まず団体内の責任者に見せた。個人の思いつきで外部サービスを導入できる組織ではない。手続きには時間が掛かるが、それにも理由がある。
事務所に売上は生まれなかった。けれど真壁は、相手が何に困っているのか分かっただけでも収穫だと思った。会社の外には、相談したくても相談先を知らない職場がまだある。トラッバができることと、できないことの境界は、そうした声を聞くたび少し明確になっていた。




