見えない委託先
新しいクラウド保守の提案を受けた銀利は、営業資料の綺麗な図より先に委託先の一覧を求めた。監視記録を保存する設備は国内にあるという。しかし障害対応の一部は別の会社が担当する。どの情報へ誰がアクセスできるのか分からなければ、顧客へ説明できなかった。
真壁は先方の担当者へ質問を送った。外部委託の範囲、再委託の条件、障害時の連絡経路。返答は丁寧だったが、一部は「社内基準に従う」という表現にとどまっていた。日下部はそれだけでは必要な確認が終わらないと判断し、契約書の関連条項を取り寄せた。
良助は会議で使う表に、会社名を書き込んでいた。二つの委託先が同じ略称になっている。「ここ、違う会社ですよね」。真壁が確かめると、片方はグループ内の別法人だった。名称が似ているだけで責任が同じになるわけではない。表を書き直すと、連絡経路に一つ抜けが見つかった。
銀利は価格の比較をいったん止めた。安くなる見込みがあっても、顧客との約束を守れなければ採用できない。既存のサービスにも課題があるため、現状維持を正解と決めているわけではなかった。「分からないことを先に減らそう」。その一言で、質問票の優先順位が決まった。 委託先の一覧には国外の時間帯で応対する窓口もあった。資料の保管場所だけでなく、障害時の応対体制が顧客へどう説明されるのか確認が必要だ。
取引先の担当者は追加の資料を取り寄せるため、返事に数日かかると伝えた。真壁は期日を受け入れ、翌週の打ち合わせを入れた。相手にも社内で聞かなければ分からないことがある。安い値段も整った広告も、実際に働く人たちの責任の上に成り立っていた。




