置きっぱなしの箱
久世匠が機材棚の奥から取り出したのは、二年前に購入した小型サーバーだった。使わなくなった後も、いつか試験に使えると考えて保管していた。電源は入っていないが、管理台帳では稼働中のままになっている。この状態では、保守契約の対象から外れていない可能性があった。
野江は台帳を調べ、実際に費用が発生しているか確認した。保守会社の請求には同型機の台数がまとめて書かれ、個々の機械まで追えない。田倉が請求先へ問い合わせると、一台分の保守延長料が含まれていた。金額は大きくない。けれど使っていない機器に、会社は毎年少しずつ支払っていた。
良助が「箱にも期限を書いたら駄目ですか」と提案した。久世はしばらく考え、「期限だけだと、使う予定があるものも困るな」と返した。二人で台帳に用途、所有者、次回確認日を記すことにした。撤去を決めるのは資産管理の担当で、情報が残っていないかの確認も必要だ。
銀利は保守契約の整理を認めたが、全設備の一律削減はしなかった。古い装置が予備として役に立つ場面もある。何を残すかを説明できるなら、それは無駄とは限らない。久世は機器を適切に保管し直し、保守終了の手続きだけを進めた。 久世は棚の中に眠るケーブルにも番号を付けた。端末と線を組で管理しておけば、いざ予備機を使う日に適合するものを探し回らずに済む。
夕方、棚に小さな空間ができた。良助は床へ落ちていた埃を拭き取り、何も置かなかった。久世はその余白を見て、翌週の点検を少し楽しみに思った。片づけた棚がすぐ新しい箱で埋まらなくてもよい。設備の台帳にも、これからの判断を置く場所ができた。




