相手にも担当者がいる
調査の結論が見え始めた頃、部品メーカーから意外な連絡があった。不審な試行の一部は、以前契約していた保守会社の自動確認処理に由来する可能性が高いという。だが全件が同じ理由かは、まだ分からなかった。真壁千尋は連絡を聞いて、すぐに「誤報だった」と社内へ伝えそうになり、言葉を飲み込んだ。
三好は旧保守会社へ連絡を取っていた。担当が異動しており、確認には時間がかかる。以前のサービスを停止したはずなのに、契約終了後の作業が残っていたのかもしれない。トラッバは資料の比較を手伝えるが、別会社の内部を勝手に調べることはできない。銀利は先方の調整を待ちつつ、監視設定の変更を急がせなかった。
小田切は当初の警報を無意味だったとは思わなかった。正当な作業でも、どこから来るか分からなければ不審な通信に見える。事情を確かめず除外設定を入れれば、別の異常も見えなくなる。彼女は送られてきた作業日程とログの時刻を突き合わせ、合う部分と合わない部分を色分けした。
良助が「時間が近いのは同じ理由ですか」と聞くと、野江は「近いだけでは証拠にならない」と教えた。青年は表の見出しを「一致」と「類似」に分け直した。その違いだけで、顧客が読む時の印象も変わる。誰も、分からない穴を推測で埋めようとはしなかった。
夕方、旧保守会社から一部の処理が残っていたとの回答が届いた。三好は取引先との停止手続きを始め、トラッバには残る事象の確認を依頼した。事務所の電話は静かになったが、調査は終わっていない。相手の会社の机でも、名も知らない担当者が同じように資料をめくっていた。




