止めるのは誰か
部品メーカーの情報管理者、三好は朝の会議で昨夜の通知を説明した。認証の試行は不審だが、不正なログインが成立した証拠はない。工場の設備担当は念のため関連する全端末を停止したいと言い、製造部長は納期への影響を心配した。トラッバの名前が出ると、何を勧めているのか確かめる視線が集まった。
三好は野江の報告を示した。疑われるのは外部公開された認証口であり、生産制御系との経路は現在確認できる範囲で分離されている。だからといって放置はできない。まず対象アカウントの使用を限定し、関係者のアクセス記録を保全する。停止の判断は自社で行う。三好はその順番を自分の言葉で説明した。
一方、事務所では銀利が三好からの電話を受けた。「安全だと言い切ってほしい」と頼まれても、彼は承知しなかった。「現時点で調べた範囲は示せます。調べていない場所まで保証することはできません」。その代わり、確認に必要な資料と判断点を一枚にまとめて送ると約束した。
良助は図面の表記が二種類あることに気づいた。営業部が使う名称と技術部が使う名称が、同じ機器を指している。「名前が違うと、別の場所に見えますね」。銀利は確認を指示し、図の凡例を統一させた。些細に見える修正で、製造側の説明はずっとしやすくなる。 工場では夜勤班から昼勤班への申し送りが始まり、停止していないラインの番号が読み上げられた。三好は現場の人が同じ判断材料を持てるよう、報告の写しを渡した。
夕方、三好は生産ラインを止めず、対象アカウントの利用制限と監視強化を選んだ。その判断には顧客自身の責任が伴う。銀利は三好の決定を記録し、翌日の確認項目を共有した。窓の外を走る配送車は、明日も同じ時間に工場へ部品を運ぶのだろう。




