便利すぎる分類
野江蓮が試した新しい通知分類は、最初の三日間だけ驚くほどうまく動いた。緊急度の低い警告が一つの箱へ集まり、運用画面はすっきりした。飯塚も小田切も喜んだ。しかし四日目、別の顧客の重要な異常が低優先の箱へ振り分けられていたことが分かった。
小田切が手動確認で気づいたため、対応の遅れは最小限だった。顧客への連絡も規定の範囲に収まった。それでも野江は背筋が冷たくなった。便利だと思った分類が、見落としを生む可能性を含んでいた。銀利はすぐに新しい分類を停止し、元の方式へ戻すよう指示した。
良助は原因調査の会議に参加しなかった。別室で古い資料の整理をしていたからだ。必要な専門知識を持つ野江と小田切、久世が記録を見直し、元の条件が異なる顧客へ同じルールを適用していたことを突き止めた。銀利は検証段階での範囲設定が甘かったと認めた。
夕方、野江は失敗を報告するため飯塚の席へ向かった。「次はもっと慎重にやります」と言うと、飯塚は「慎重だけじゃまた同じことになる」と返した。だから試す範囲と止める条件を、最初に決めておこう。二人は日下部を交え、手順を作り直した。 久世は過去の設定へ戻った後も、監視結果が想定どおりか二度確かめた。「戻した」と「戻ったことを確認した」は別の作業だった。
夜、野江は試験に使った資料を保管した。やり直すことが恥ずかしくなくなったわけではない。しかし戻す方法が決まっていれば、失敗を隠さずに済む。事務所の画面には元の警告が並ぶ。数は増えたが、今日の野江にはその多さがむしろ確かなものに見えた。




